銀とガラスを合わせたら不思議な模様が浮かび上がった|ガラスフュージング
毎月いろんなガラス作家さんとinstagramでライブをさせていただいているのですが…
7月23日にステンドアトリエB.O.O.さんからお送りしたライブでは、ガラス作家『緒方孝拡』さんからガラスと銀を合わせる面白いレクチャーしていただきました。
インスタコラボライブ2023.7.23アーカイブ
ステンドアトリエB.O.Oさんから 緒方修一先生、緒方孝拡さんとのコラボライブだよ。銀とガラスの反応など面白い内容満載です。
銀粘土を水で溶いてガラスに塗って焼成するという面白い技法で、ガラスのリアクティブをいっぱい楽しむことが出来ました。
実際に僕自身も銀とガラスでやってみようと思い、同じ技法でやってみたところ…
銀と反応したガラスの一部分に特殊な模様が浮かび上がるという現象が・・・。
今回はその現れた模様について記事にしたいと思います。
今回の内容をYouTubeで解説
銀とリアクティブガラスの面白い反応
今回の実験で使うガラスはブルズアイ社のガラスフュージング用リアクティブガラス。
このガラスは特殊なガラスで、銀や銅と一緒に焼成すると変色するガラスです。
このガラスと銀を合わせて焼成するとガラスに含まれる成分と銀が反応して茶色や褐色になって、その反応を利用して作品に取り入れたりすることができるのですが・・・
まずガラスにどのようにして銀を合わせるのか。
銀そのもの・・・
銀箔・・・
僕が選んだのは・・・
銀粘土
そうです。
この粘土で造形して焼成することによりいらない成分が飛んで純銀になるという・・・
クラフト界の革命品!銀粘土(アートクレイシルバー)です。
この銀粘土、焼成すれば固体の銀になりますが粘土状態だと水で溶くことが出来るんです。
それをガラスに筆で塗れば銀とガラスを合わせて焼成することが出来ますね。
銀粘土を水で溶いてガラスに塗る
さぁやっていきましょう。
使う銀粘土はたったのこれだけ。
この量を水で溶いていきます。
銀粘土で濁った水の出来上がり。
これを筆でガラスに塗っていきます。
実験に使うガラスは・・・
0009 リアクティブクラウド
1009 リアクティブアイスクリア(イリデッセント)
0113 ホワイト
1100 クリアテクタ
そうなんです。
元々銀と反応するリアクティブガラスを2種類と同色系でリアクティブしないガラス2種類を同条件で焼成してみて見比べてみようという作戦
どれも同じ感じで筆を走らせ軽く乾燥させてました。
銀粘土を塗ったガラスを焼成
ここから電気炉で焼成するわけですが、まずはフルフューズでの焼成をしたいので下に通常のクリア3mmを敷いてその上に銀粘土を塗ったガラスをかさね、ガラスの厚みを6mmにして焼成してみます。
6mm厚にしておけば、フルフューズしてもガラスが縮まないので焼成後に実験結果がわかりやすいよね。
トップ温度は780℃に設定。
780℃で中を覗いてみたら・・・
左上:1009リアクティブアイスクリア
右上:0009リアクティブクラウド
左下:0113ホワイト
右下:1100クリアテクタ
やはり上2枚のリアクティブガラスは反応しまくってます。
逆に下側2枚は無反応。
しっかり冷ましまして・・・
うきゃー!変色してるね。
リアクティブ系のガラスは見事に銀を塗った部分が黄色や茶色に変色しております。
そして予想通り、下側の2枚は銀との反応はありませんね。
ちょっと待て。なんだこの模様は?
「なるほど、思ったより変色が激しいな・・・」なんて焼成したガラスをまじまじ見ておりましたら・・・
なんじゃ?この模様は!!
そうなんです。「0009リアクティブクラウド」が銀と反応した部分にこんな模様が現れていたんです。
そしてよく見たら・・・
変色しなかった通常のクリアガラス(1100クリアテクタ)にもなんだか怪しい模様が浮かび上がっておりました。
どういうことなんだ?
ますます意味が解りません。
どういう条件でこの模様が浮かび上がったのか原因を知りたいよね。
そして、この模様を自在に作れるようになったらすごくないっすか?
よし、再現にチャレンジだ!!
不思議な模様の再現に挑む
何とも言えないこの模様なのですが、銀粘土を水で溶いてガラスに塗れば必ず浮き上がるものではないようです。
改めてインスタライブで見せていただいた焼成見本を確認してみたのですが、こんな模様はどのガラスにも浮かびあがってませんでした。
つまり、銀粘土を塗ったら模様が出るのではなく、何かしら別の条件が重なって模様が浮かび上がってるのだと思われます。
もうこうなったら仮説を立てて一つずつ検証していくしかありませんよね。
順番に理由を探っていきましょう。
1.気泡が残ってた説
まず思いついたのは筆で塗った時に気泡が出来てそれが焼付いちゃった説。
模様をよく見たら泡が集まったような模様になってますもんね。
でも速攻この説ではないことがわかりました。
この模様が出現したときの焼成前の写真を見てみても・・・
気泡どころか気泡の跡すら残ってなかったのです。
どうやら気泡が原因ではないようです。
2.銀粘土の濃度を濃くすれば模様が出る説
次に思いついたのは銀粘土の濃度が濃ければこの模様が浮かび上がるんじゃないか説。
模様が出てる部分をよく見ると、最初に筆を下した位置に模様が浮かび上がってます。
筆で書くとなれば書道と一緒。最初濃い状態から筆を走らせていけばいくほど濃度は薄くなるもんね。つまり、最初に筆を下した部分は銀粘土が一番濃い状態。
ということは銀粘土の濃度を濃くしてガラスの上に置けばこの模様がでるのではないか。
やってみよう。
まずは1回目より濃度の濃い銀粘土溶液を作って。
それをスポイトでとり、濃度が濃いままガラスの乗せていく・・・
さぁ焼成してみよう。
今回はリアクティブガラス2種とも3mm厚の状態で焼成するので、トップ温度は720℃。
ガラス自体が縮まない温度で焼成してみました。
果たして結果は・・・
あちゃー。模様が浮かぶどころか銀そのものがガラスに浮かんじゃいました。
そりゃそうか・・・
銀が濃いんだもんな。銀色にもなるわな。
でも銀色の周囲が茶色になりそこから色が淡くなり黄色っぽくなったりで、これはこれで全体で面白い模様を作り出すことが出来ていいですね。
ただ、あの模様は作り出すことは出来なかった。
3.濃くして温度を上げたら模様出るんじゃない説
でも先ほどの実験だけで「銀が濃ければ模様が出る説」を却下するのは早過ぎじゃないかい。
先程の銀を濃くした実験ではガラスが縮まないようにと720℃、つまり模様が出た時の焼成(780℃)と温度が違うじゃないか。
なのでもう一度銀粘土の濃い溶液をガラスに塗り、模様が出た時と同じガラスの厚みと温度で焼成してみました。
模様はでない。
やはり銀が濃いので銀色になっただけであの模様はどこにも浮かび上がりませんでした。
やはり、「銀を濃くすれば模様が出るんじゃね説」は却下ですね。
もう最初と全く同じ条件でやるしかないよね
いったいどんな条件であの模様は浮かぶんだろうか・・・
もうこれ以上仮説を立てることも出来ないしまずは原点、最初に模様が出た時と全く同じ条件で焼成して、もう一度あの模様を再現してみることに・・・
最初に模様が出た時と全く同じ条件。
同じガラス、同じ銀粘土の濃度、同じ重ね方、同じ焼成温度・・・
さぁ結果は・・・
ダメだ。あの模様はどこにも見当たらない(涙)
じゃあ、あの模様は何だったんだよ・・・
不思議な模様の研究は続きます
というわけで今回の実験では最初に浮かび上がった模様の再現はできませんでした。
もしこれと同じような模様が出た人がおられたら焼成条件をお聞きしたいものです。
一体あの不思議な模様はなんなんだろ・・・
ただガラスと銀の反応はなかなか面白く、使い方によっては作品に活かせる部分も多々ありそうですね。
まだまだガラスと銀の不思議な模様の正体究明は続きます。
ガラスって本当に面白いですね。
ではまた。
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