フュージングガラス変色のナゾにせまる
・電気炉を開けたらガラスが茶色くなっちゃった
・ガラス同士の接点が変色してるような
・ガラスに茶色のラインが入っちゃってる
・なんで変色しちゃったんだろ?
・変色を防ぐ方法ってないのかな?
こんな思いをしたことはないでしょうか。
ウキウキ気分で電気炉に入れたのに、出来上がったら部分的に茶色になってたり、ガラスの合わせた部分が茶色い線になったり。
これはガラス自体の製造工程で、ガラスの色を出すために使用する金属や鉱物が反応することによって起こる現象です。
「黄色と青を合わせると変色するんだよ~」
とか聞いたことがあるかと思います。
今回はこのガラスを焼成することによる変色について、
・なぜ変色するのか
・変色を防ぐ方法はないのか
・変色するしない色の組み合わせ
これらをわかりやすく解説したいと思います。
記事の内容を動画で解説
ガラスはどのように変色するのか
ガラス焼成時の変色はガラス製造工程で色を出すために使用する金属や鉱物の化学反応が原因です。
まずは実際に変色するガラス同士で焼成してどんな感じで変色するのか見てみることにしました。
使用するガラスは
BULLSYEYE 0144 Teal Green(ティールグリーン) と 0137 French Vanila(フレンチバニラ)
今回はティールグリーンの板ガラスの上にフレンチバニラのガラスパウダーをふるう方法で実験してみます。
グリーンの板ガラスの上にちょっとしたデザイン性のある障害物を置いて、その上からフレンチバニラのガラスパウダーをふるいます。
なかなか面白いデザインになったのではないでしょうか。
これをガラスパウダーがある程度溶けてくれる温度、720℃で10分キープで焼成いたします。
トップ温度の状態でも、「あれっ!?こんな色で大丈夫か」という感じ
しっかり冷まして電気炉を開けましたら・・・
見事(笑)変色
真っ黒になっております。
これはこれで面白い色合いにはなって入るのですが、グリーンの上にオフホワイトでくっきりデザインを浮かび上がらせたかった人に取っては大失敗ですね。
銅と硫黄の化学反応による変色
さて、今回のこの変色。
原因はティールグリーンに含まれる銅とフレンチバニラに含まれる硫黄の反応による変色。
つまり、この0144ティールグリーンと0137フレンチバニラを合わせると必ず変色をしちゃうんです。
グリーンとフレンチバニラを合わせてキレイに作ることはできないのか?
この色を出すために銅が使われてるガラスはこのティールグリーンだけではありません。他の青系、緑系のガラスなどには銅が使われてるものが結構あります。
でもグリーンとフレンチバニラを合わせたいこともあるでしょう。
他のグリーン系でも実験してみました
今回は色合いがより分かりやすいように板ガラスで実験
使用したガラス
・0112 Mint Green(ミントグリーン)左上
・0117 Mineral Green(ミネラルグリーン)
・0144 Teal Green(ティールグリーン)
・0145 Jade Green(ジェイドグリーン)左下
・0212 Olive Green(オリーブグリーン)
この5種類のグリーンの上にフレンチバニラを乗せて、760℃10分キープで焼成してみました。
変色したものと変色しないもの
しっかり冷まして電気炉のふたを開けましたら、どうやら変色してるガラスとしてないガラスがあるようです。
【⭕️変色なし ❌変色あり】
・0112 Mint Green(ミントグリーン) ⭕️
・0117 Mineral Green(ミネラルグリーン)⭕️
・0144 Teal Green(ティールグリーン)❌
・0145 Jade Green(ジェイドグリーン)❌
・0212 Olive Green(オリーブグリーン)⭕️
最初の実験で使用した0144ティールグリーンはもちろん変色するのですが、0145ジェイドグリーンもどうやら変色しているようです。
他の3種類に関しては全く変色しておりません。なかなか面白い結果が出ましたね。
そうなんです。変色した0144ティールグリーンと0145ジェイドグリーンは銅が使われてるガラスで、その他のガラスは銅が使われてないガラスなのです。
グリーンとフレンチバニラで変色させないようにするには、この銅が使用されてないグリーン系のガラスを使うというのが答えの一つとなりそうです。
他の銅や硫黄を使ったガラスもあるのでは?
銅や硫黄を使用しているガラスは今回のグリーンとフレンチバニラだけではありません。
まだまだブルー系やグリーン系の他のガラスにも銅が使用されてるものはたくさんありますし、また硫黄を使用したガラスもレッドやイエロー、オレンジなどの暖色系ガラスで多数あります。
もちろんこれらを合わせると間違いなく変色してしまいます。
そんなのわかんないじゃないか!どうしろというんだよー!
という声が聞こえてきそうですが・・・
ブルズアイ社のリアクティブ表
実はこのガラスの変色というのは銅と硫黄だけではなく鉛やシルバー、セレンを含むガラスというのも組み合わせで変色を起こすガラスです。
こうなるとかなりの組み合わせで変色をすることがあり、ユーザー側としてはお手上げ状態。
そんなことにならないよう、ガラスメーカーブルズアイ社は自社生産のガラスがどんな金属が含まれてどのような組み合わせで変色するのかリスト表を公開しております。
ブルズアイ変色(リアクティブ)表 Reactiv Potential Of Bullseye Glass
この表に掲載のガラスを確認することによって、ご自身が使用するガラスの組み合わせでの変色するしないが判ります。
また、2枚目は変色する原因となる銅や硫黄、鉛、セレンなどが含まれないガラスのリストになってますので、変色させたくない時にはそちらのガラスを組み合わせるという選択もできるようになります。
非常に便利な表ですね。プリントアウトして持っておくことをお勧めいたします。
変色させない方法は他にも
ここまで、ガラス焼成時に変色するしないまではお分かりいただけたかと思います。
ガラスを変色させずに焼成する方法は
変色するガラス同士を合わせない
これが一番分かりやすい変色を防ぐ方法なのですが、他にも変色させない方法があります。
これまで見てきたように変色はガラスの接点で起こってます。
つまり変色する組み合わせのガラス同士でも、そのガラスとガラスの間に、変色を起こさないガラスを挟むことによってガラスの変色を防ぐことができます。
ティールグリーンとフレンチバニラの間にホワイトやクリアなどのいわゆる銅や硫黄などを含まないガラスを挟むことによって変色を防ぐことができます。
どうしてもティールグリーンとフレンチバニラを使いたいねん!
なんて時には間に変色しないガラスを挟んでみると良いでしょう。
ガラスの変色はマイナスではない
これまでの内容からするとガラスが変色するのをマイナス面として捉えておられる方が多いと思います。
どうしても自分が予想してなかった変色が起こると「うわっちゃ〜、やっちまった〜」となるのも分かります。
では変色することが分かってそのガラス同士を合わせるという場合はどうでしょうか。
接点が黒や茶色に変色することを利用するとか・・・
そうです。ブルズアイ社もこの変色(リアクティブ)をマイナスなんかに捉えておらず、むしろリアクティブを楽しみましょうという方針です。
変色させて輪郭に細いラインを出したり、グラデーションを作ったりなどこの変色をあえて利用する表現方法は多くのガラスアーティストが使っている技法です。
そうです、決してマイナスなんかではありません。
変色する組合せを理解することによって、これまでご自身の作品では使ってなかった新たな表現方法が見つかるかもしれません。
是非、このガラスの変色(リアクティブ)をプラスに変える方法で新しい作品を作ってみてはいかがでしょうか。
ガラスフュージングを楽しみましょう。
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