フュージング電気炉でロンデルガラスを作ってみよう・ガラスフュージングの可能性
皆さんはロンデルガラスをご存知でしょうか。
ヨーロッパの古い建物などの窓に小さめの丸いガラスがはめ込んであるのを見たことがある方もおられると思います。
このロンデルガラス、元々は吹きガラスの技法(ロンデル法などと呼ばれる技法)で、ポンテ竿先のガラスを遠心力で広げて作る丸い板ガラス。
それをステンドグラスのパーツとして窓などに利用されているのがロンデル窓です。
今回はこのロンデルガラスっぽいもの(笑)をフュージング電気炉で作ってみました。
今回の内容をYouTubeで解説
フュージング電気炉の可能性を広げよう
さて、このロンデルガラス制作。
フュージング電気炉で作るとなりますと、もちろん本当のロンデルガラスのように溶けたガラスを遠心力で広げていくという方法は使えません。何か別の方法を考えなければ・・・
でも電気炉を使って丸い板ガラスを作る方法ってあったよね。
そうですポットメルト技法。
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植木鉢などにガラスを詰めて加熱し溶けたガラスを下に垂らしてガラスを制作する方法です。
もちろん下に落ちたガラスは表面張力も働いて丸くなります。
今回は無理やりですがこれをロンデルガラスと呼んじゃいましょう。
ポットメルト技法でロンデルガラスを作る
さぁ、やっていきましょう。
まず用意するのは植木鉢。これがなかなかの優れもの。
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耐火性はあるし、安価だし、そこに穴は開いてるし、もう「ポットメルトしてちょうだいよ」と言わんばかりの器。
もうこうなってしまえば植物を植えるだけではもったいないよね(笑)
今回は100均ダイソーで売ってる小ぶりの植木鉢を使ってみました。
底に穴は開いているんですが、このサイズだと溶けたガラスを垂らすにはちょっと穴の大きさが足らなかった。
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というわけで、砥石を付けたハンドピースグラインダーで植木鉢の底の穴を広げていきます。
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うん、これくらいでいいんじゃないかな・・・
この穴サイズなら溶けたガラスも落ちてくれそうです。
ハンドピースグラインダースーパーセット
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植木鉢にガラスを詰める
この植木鉢にガラスを詰めるのですが、詰めるガラスは膨張率が合ってる者同士であれば結論何でも良い。自分が使いたい色のガラス、透明不透明系問わずいろいろ使って楽しめます。
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今回は、ブルズアイ「2112ミントグリーンOPディープフォレストグリーン」「0137フレンチバニラ」「1101クリア」の端材を使うことに。
楽しみなのは「2112ミントグリーンOPディープフォレストグリーン」というガラス。
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これはブルズアイ社のフュージング用ガラスの中でもストリーキーと呼ばれる2色のガラスを混ぜ合わせて1枚の板ガラスにしてるシリーズで、「0112ミントグリーン」と「1112アベンチュリングリーン」を混ぜ合わせてあります。
アベンチュリングリーンが入ってるのでキラキラとラメってる。これが溶けて下で広がると全体にどんな効果を表すのか楽しみですね。
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また「0137フレンチバニラ」は、色的にいいアクセントになるのではないかと予想して加えることに。
そして「1101クリア」はガラス全体がベタっとしたい色合いにならないよう透明を入れて透過を高めるイメージで使いました。
全てのガラスを植木鉢に入れやすいサイズにカットして詰めていきます。
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完成を直径10cmくらいにするのであれば詰めるガラスは150gくらい。溶けて植木鉢に残るガラスの分量も考えると155~160gほど入れるのがいいと思います。
溶けたガラスを垂らすためのモールド!?
さてこの植木鉢に入ったガラスを電気炉の中で溶かして下に落としていくのですが、この植木鉢を上に固定する物を何にするのか。
そこで用意したのがこのモールド。
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元々は穴が開いてないモールドで、カーブしたガラスを作る用のモールド。
そこに植木鉢が刺さるように穴を開けたものですね。
使う電気炉が「キルンキング160PKS」で棚板が15cm角というのにぴったりの穴あきモールドなのです。
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フュージング電気炉内にセッティング
さていよいよ焼成と行きたいところなのですが、まずは電気炉内の準備が大事。
棚板の上にガラスを垂らすのでまずは離型紙を用意。(もちろん念のため棚板自体にも離型剤を塗っておいてね)
通常であればいつも使ってるセラフォーム(離型紙)を使うのですが、今回はFKCという厚いタイプの離型紙を使いました。
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セラフォームだと焼成中に粉状になって離型効果がでるのですが、今回のように800℃を超えるガラスが垂れるとなると、ガラスがその粉を拾い上げてしまう可能性があります。
そこで分厚いFKCだとモロくはなるものの粉状までにはならないので、溶けたガラスが拾い上げる可能性が低くなるんですね。
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もちろんこのFKCに離型剤パーフェクトプライマーをスプレーしてよりガラスにくっ付きにくい状態にします。念には念を・・・ガラス焼成には必須の考え方です。
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離型剤をスプレーしたFKCを棚板に敷いてその上に穴あきモールドを乗せる。
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そして先ほどガラスを詰めた植木鉢を上から差し込んでセッティング完了です。
パーフェクトプライマー(離型剤)
高温でのフュージングにも対応のスプレー式離型剤です。焼成後ガラスに白い跡も残りにくく、「カルアドヴェール(カラードヴェール)」などモールドの微細なテクスチャーを再現するのにも適しております。
FKC5枚セット(離型紙)
ガラスフュージング用厚めの離型紙です。通常の離型紙より厚みがあるため、高温の焼成でもガラスの底面に巻き込みにくい離型紙です。ブロックフュージングの壁面に沿わせても焼成後の倒れ込みがほぼありません。
さぁガラスを溶かしていこう!
今回の焼成プログラム(キルンキング160PKSの場合)
・840℃まで1時間半で上げる
・840℃で30分キープ
・482℃で1時間半キープ
・420℃で10分キープ
・371℃で30分キープ今回の焼成スケジュールはこんな感じ。
ガラスは端材状態なので温度差で割れてもどうってことないのですが、植木鉢やモールドが割れると悲惨なことになるので、トップの840℃までは1時間半かけるようにしました。
トップ温度のキープ時間でガラスの落ち具合を目視で確認いたします。
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落ちきらない場合はキープ時間を長くするか、温度を上げるかしてみてくださいね。
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ブルズアイの場合は482℃でしっかり徐冷時間を取りましょう。
あとは371℃までをなるべくゆっくり下げるのが歪みをなくすコツです。
キルンキング160PKSの場合、温度を下げるスピードは調整できないので、あえて420℃で10分キープをいれて段階的にゆっくり温度を下げるプログラミングにいたしました。
さぁあとはしっかり冷まして出来上がりが・・・
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見事に落ちてますね。
面積的には10cmくらいの円。もちろん垂れたガラスの跡がつながった状態です。
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もちろんこのままでは持ち上がっちゃうのでガラスをカットいたします。
これで完成なのか・・・
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一見これで完成のような気がしますが、どうしても気になる部分があります。
ガラスをカットした跡・・・。
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そうなんです。出ベソ状態なんです。
たとえ際っきわの部分でカットしたとしても出ベソが残っちゃうんよね。
やはりここはどうにかしないといけません。
ポットメルトから仕上げまでガラスフュージングは面白い
さてこの出ベソをどうしてやろうか・・・。
考えられる方法としては、「削って研磨して表面ツルツルに仕上げる」「もう一度焼成して平らにする」この2点かな。
どちらでもある程度の時間をかければ出来そうな感じですね。
さぁここで僕がえらんだ方法は・・・
もう一度焼成して平らにする
そう、ここで僕が選んだ方法は「もう一度焼成して平らにする」
もちろん研磨でも出来るとは思うのですが出ベソの部分だけ削ってそこだけ研磨しても周囲との光沢具合が変わったりして結局もう一度焼成したりすることもありそう・・・
ならば最初から焼成して平らにしちゃおうという考えです。そのまま焼成するんじゃないよさぁ、そのまま焼成するぞ!!・・・というわけにはいきません。
実はこの出ベソのまま焼成しても真っ平には中々ならないんですね。
よほどの高温にすればならなくはないとは思うのですが、フルフューズ程度の温度帯では出ベソが丸くなるくらい。
ポッコリ感は取れることはありません。
さてどうするのか・・・
裏返して焼成する。そうなんです。出ベソが下になるようにガラスを裏返して、重力にもあやかって真っ平にいたします。
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ここで注意しなければならないのは・・・
もともと裏面だった部分を表にしての焼成。
そうなんです。もともと裏面だったガラス面は離型紙や離型剤と接していた面。
もちろん焼成後、水洗いなどして見た目はガラスのみの面のようにみえるのですが、実は離型紙や離型剤の成分がまだまだ付着しているのです。
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この目には見えない離型紙や離型剤の成分。これが結構なやっかいもの・・・。
つまり、そのまま焼成するとこの付着した離型紙の成分がいたずらして失透する可能性があるんです。
表面を削る
なんと離型紙の成分が残ったガラス面を削ります。
「いらない成分がガラスに残ってるなら削って無くしてしまえ」ということですね。
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サンドブラストで表面を削ってすりガラス状にしてしまいました。
僕の場合はサンドブラスト機があるので使いましたが、もちろんアフロホイールビットやガラス研磨布で削ってもOKです。
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アフロホイールビット極細目
簡単なガラス表面の研磨・サンドブラスト後の表面仕上げ用先端ビット「アフロホイールビット極細目」●被せ生地のサンドブラスト後、コーティング剤や薬剤で表面仕上げをしたくない場合に使用する研磨ビットです。
ガラス研磨布セット
ガラスフュージング後のバリ取りや簡単なガラス研磨に使用できる研磨布セットです(ガラス工芸用) ★スポンジ使用により柔らかく、研磨面にフィット ★番手を交換していくことにより、荒削り〜ツヤ磨きまで可能。
削った面を上にして焼成
やっとこれで焼成に入ります。
焼成温度はフルフューズ(780℃~800℃)で行います。出ベソをキレイに平らにしたいもんね。
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もちろん徐冷時間も482℃で1時間しっかりととりまして、371℃でも30分キープ。
そんな感じでしっかり冷まして出来上がりが・・・
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いい感じですね。しっかり出ベソも引っ込んでくれました。
さぁこれで完成・・・と行きたいところではありますが、まだまだでございます。
もともと表にしたい方を上にしてもう一度焼成
そうですよね。出ベソを引っ込ませるために焼成しただけで、本来表面として使いたいガラス面は今の段階では棚板側で焼成されてますもんね。
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そうです。もう一度裏返して焼成して今の棚板面のガラスを表面として仕上げます。
やっぱり表面を削るところから
はい。裏面を表にするわけですからまた離型紙の成分を削る必要がありますね。
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しっかりと削りました。ここまでなかなか長かった・・・。さぁ最終焼成に向かいましょう。
あまぁぁぁぁぁぁぁぁい
まだやることがあるのか・・・
表面の気泡痕を消したい
焼成する表面をよく見てみたら・・・
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ポットメルトで落としたガラスだけに表面のところどころに気泡痕がクレーターのように残ってしまってるんですね。
このまま焼成したら穴はマイルドな感じにはなるもののクレーターは残ってしまう可能性が高いのです。
そこでどうするのか・・・
上からクリアパウダーをふって最終焼成
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そうなんです。ガラス表面にブルズアイ「1101クリアパウダー」または「1401クリスタルクリアパウダー」を振ります。
だいたい1~2mmの層になるくらい均等にふります。
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この状態で最終焼成するんですね。そうすればポコッと開いたクレーターもガラスパウダーが溶けて埋まってくれるんです。
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最終焼成もフルフューズのプログラムでOK。
徐冷もしっかりして冷ましましたら・・・
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完成!!!
めっちゃいい感じに出来上がりました。
ガラスフュージング電気炉でのロンデルガラス制作大成功でございます。
いろんなアレンジできそうな電気炉ロンデルガラス
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いかがでしたでしょうか。フュージング電気炉を使ったロンデルガラス。
いろんな色で楽しめそうですし、このままスランプしてガラス皿にしたり小さいロンデルを作ってアクセサリーにしたりと使用方法もたくさんありそうです。
透明系ガラスを使えば、元々のロンデルガラスのようにステンドグラスパーツとして窓やパネルに使用できますし、不透明系で作れば建具などに貼り付けて装飾としても使えそうですね。
またガラスを落とす高さを変えたり、植木鉢の穴径を変えたりすれば出来上がる模様も変化しますので同じ色のガラスを使ってもいろんなデザインで楽しめます。
是非みなさんもチャレンジしてみて下さいね。
ガラスって本当に楽しいな。
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