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ダイクロガラスでサンドブラスト&ガラスフュージング・ガラスボタンを作ってみた

ガラスフュージング サンドブラスト

ガラスフュージングでみんな大好き「ダイクロイックガラス」。

フュージング用のガラス表面に金属を真空蒸着した煌びやかなガラスは一度は使ってみたいものです。

今回はそんなガラスフュージング用のダイクロイックガラス(通称ダイクロガラス)を使って、つぎやん流のガラスボタンを作ってみたいと思います。

今回記事の内容を動画でもどうぞ

ダイクロガラスでスーツ用のガラスボタンを作る

僕自身、毎年末「天才万博」という音楽イベントを観に行くのですが会場がすごく素敵な世界観なんですね。

天才万博会場の雰囲気は最高

イベント自体、特にドレスコードはないのですが、今年は僕自身1年間仕事を頑張ったご褒美として会場の雰囲気に合わせたオーダースーツを作ってみようかと思い大阪の「ROI’S TAILOR(ロイズテーラー)」さんにお願いすることにしました。

ロイズテーラーのオーナーさんと何度か打ち合わせさせていただく中で・・・

「つぎやん、ガラスでスーツのボタンを作ることは出来る?」

と提案いただきまして、「もちろん出来ます!!」と即答。

初めてのオーダースーツに自分で作ったボタンを着けれるなんて最高じゃないっすか!!

よーしガラスボタン作るぞ!と今回選んだのが「ダイクロイックガラス」です。

ガラスを丸くカットする

今回のスーツで使用するボタンのサイズは直径2cm。

もちろんこれをガラスで作るとなるとまずはガラスを丸くカットしなければなりません。

使用するガラスはダイクロガラス「ブラック/ゴールド」の2mm厚。
(ベースガラスはブルズアイ0100ブラック)

もちろんカバーガラスにはブルズアイ1101クリア2mm厚

この2枚を丸くカットし重ねて焼成してボタンにする予定です。

通常であればガラスに直径2cmの円を描いてガラスカッターでするのですが、今回はこんなアイテムを使ってみました。

スモールサークルカッター(レンズカッター)

「レンズカッター」とか「スモールサークルカッター」とか呼ばれる工具です。

通常のガラスカッターですと直径20cmとか大きめの円であればキレイにカットできるのですが、直径の小さな円はかなり難しくなるんですよね。

でもこのサークルカッターはさすが小さな円専用のガラスカッター。
直径2cmでもお茶の子さいさい。

キレイにカットできました。

ダイクロガラスを「福」の字に!?

さぁキレイに丸くカット出来ましたダイクロガラス。

このままクリアと重ねて焼成してゴールドのキラキラガラスボタンの完成!!というのでもいいんだけれども、それではちょっと面白くない。

そこで今回僕が考えたのは「福」の文字のガラスボタン。

そうです赤い提灯や漢字のネオンなどが飾られる天才万博の世界観に合わせたイメージで、「福」の字にしてみようかと・・・

こんなんありますやん

中華街のお店なんかに「福」が逆さ向きに飾られてるのとか見たことあるでしょ
※中国では「倒福(到福)」と言って幸せが来るとされてます・・・

キラキラの「福」の字のボタン・・・最高かよ!

さてどうやって「福」の字のダイクロガラスにするのか・・・

先程も説明したとおり、このダイクロガラスは「ブルズアイ0100ブラック」の上に薄い金属が乗っかってるガラス。

となると「福」の字以外の部分の金属を削って下地の黒いガラスをむき出しにして「福」だけ浮かび上がるようにすればいい。

そうです。ここで大活躍しそうなのはサンドブラスト技法

サンドブラストで「福」の字を残す

さぁサンドブラスト加工していきます。

なんといってもサンドブラストで大事なのはマスキング。
つまり、「福」の字だけ削れないようにマスキングでガードする必要があります。

まずは「福」の字を描く。

描いた「福」を半透明の専用シートにプリントアウト。

そしてサンドブラストマスキング露光フィルム「ラピッドマスク」に重ねて・・・

緑の紫外線で硬化する特殊なフィルム「ラピッドマスク」
原稿とラピッドマスクを重ねて
この筒の中で約2分ほど紫外線をあてる

露光機(紫外線ライト)にあてて、ラピッドマスクを変質させる。

このラピッドマスクというマスキングフィルムは特殊な樹脂で出来ていて、通常は弾力のある樹脂フィルム状なのですが紫外線を照射すると食べる海苔みたいにパリパリに変質する特徴をもってます。

ということは海苔みたいにパリパリに変質してればサンドブラストで砂を吹き付ければその部分は吹き飛んでガラスを彫ることができる。

もし紫外線をあてない部分を作ってしまえば、その部分は樹脂の柔らかい部分のままなので、たとえサンドブラストで砂をあてても弾力で砂を跳ね返してガラスに届くことはありません。

つまり、今回の加工でいくと「福」の字の部分だけ紫外線があたらないように隠してしまえば、「福」以外の部分はパリパリ状態。

そうです。「福」を黒く印刷した部分は紫外線があたらずやわらかい樹脂のまま、紫外線があたって黒くパリパリに変質した部分はサンドブラストするとパリパリが吹き飛びダイクロガラスに金属面が削れる仕組みです。

紫外線があたった部分は青黒く変質。印字で隠れた部分(福)はそのまま残る

はい。「福」を黒く印刷したシートと重ねて紫外線をあてたラピッドマスクはこうなりました。

「福」の部分は紫外線があたってないので変質せず元の緑のまま。
それ以外の部分は青黒く変質してパリパリの状態に。

サンドブラスト機で削る

さぁ、あとはこの「福」シートをダイクロガラスに貼り付けてサンドブラスト加工するだけ。

金色に輝くダイクロガラスの上から貼り付けて・・・

ガラスに貼り付け。周囲の変質した部分は少しの力で欠ける状態

サンドブラスト機の中で砂をあててダイクロ面を削っていく・・・

砂を吹き付けると変質した部分が吹き飛んでダイクロ面が削れてく
変質したフィルムは吹き飛んで「福」だけ残る

こんな感じで削れました。

「福」はマスキングが残ったままそれ以外の部分は下地の黒いガラスがむき出しになってます。

キレイに洗ってからゆっくりマスキングをめくっていくと・・・

キラッキラの「福」が現れた!!

はい「福」ガラスの完成!!!

サンドブラストとガラスフュージングの合わせ技

これで「福」ガラスの完成といきたいところではありますが、ガラスの厚みは2mmと薄くガラスボタンにするには弱すぎます。

またサンドブラストで砂があたった部分はすりガラスのように表面がザラザラな状態でとてもおしゃれボタンとして使用することはできません。

となればこの上にクリアのガラスを乗せて電気炉でガラス同士を溶着させて厚みとキレイさを持たせるしかありません。

もちろんクリアガラスも丸くカット

なのでクリアガラスも丸く同じサイズでカットしてたのです。

ガラスフュージングでキレイなボタンを作る。

さぁ、焼成していきましょう。

手順は電気炉に離型紙(セラフォーム)を置いてその上にサンドブラストした「福」ガラスとクリアガラスを重ねたものを置きます。

棚板に離型紙を敷いてその上にガラスセット

トップ温度は730℃に設定。

ガラスフュージングをされてる方だと「730℃ってちょっと温度低くね?」なんて思うかもしれません。

あまぁぁぁぁーい!!

今回焼成するガラスの厚みを考えてみよう。

「福」ダイクロガラス2mm厚+クリアガラス2mm厚

そう合計で4mm厚。

この2枚を重ねて780℃や800℃のフルフューズで焼成するとどうなるか・・・

賢い皆さんならお気づきかと・・・
気付いてない人は廊下に立ってなさい!!

そうです4mm厚でフルフューズの温度帯だとこのガラスは必ず縮みます

ガラスが縮むと「福」の文字バランスも崩れること間違いなし。

焼き上がって(ノ∀`)アチャー確定。

思い出してみましょう。

「ガラスはフルフューズの状態では6mmの厚さになろうとする」→6mmの法則

そうです。けっしてこのガラスをフルフューズしてはならないのです。

だから730℃。ガラス自体はほぼ縮まず、そしてガラスの角は丸みを帯びて「まさしくボタンだ」という形状を狙いました。

トップ温度で形状を確認する

とはいうもののガラスは生き物。730℃でのキープ時間によってガラスの溶け具合も変わってきますので、トップ温度では目視でガラスの状態を確認。

730℃10分キープくらいで理想の形状に溶けてくれました。

482℃で1時間徐冷し、その後よっくり冷まして出来上がりが・・・

いけてるやん!!狙い通り!!

「福」ガラスボタンの出来上がり!

このあとはタイタック金具を貼り付けてスーツ用のボタンとして使用いたします。
(タイタック金具にしておくと、このボタンを使用しない時に他のボタンに付け替えれて便利なのよ)

こんなイメージ

ダイクロガラスにサンドブラストとフュージングって最強

さて今回はダイクロガラスを使ってガラスボタンを作ってみました。

このようにダイクロガラスは元々キラキラとキレイなガラスでそのままカットして使っても十分素敵な作品を作ることが出来るのですが、サンドブラストで文字やデザイン性を持たせることで作品の可能性をすごく広げることができます。

ほんとガラスフュージングとサンドブラストの相性は抜群に良いよね。
是非挑戦してみましょう!

元の材料ガラスにひと手間を加えることによってオリジナリティーも生まれますよ。

これからもどんどんガラスを楽しみましょう。




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