【ガラスフュージング】オリジナリティーを出す秘訣「元の板ガラスから制作しろ」
ガラスフュージングを楽しんでる皆さんが必ずブチあたる壁。
「作品のオリジナリティ」
SNS界隈ではやれパクリだのパクられただの毎日のようにまぁ見るに耐えない攻防が繰り広げられております。
ガラスフュージングにおいては、基本「コンパチブル」という電気炉で溶着する事前提に作られたガラスを使用するのですが、これは販売されてる元ガラスをみなさん使用することになります。
つまりみんな同じガラスを使ってるんですね。
そうすると、ただ購入したガラスを並べて焼成するだけではもちろん他の誰かと同じような作品になってもおかしくないよね。そうパクるつもりはなくても同じような作品が・・・
そこでみなさんオリジナリティーを求めていくわけですが、中には他の誰かが使ってないアクセサリーパーツや装飾品を探しまくって使ってる人なんかもちらほら・・・
いやこれもったいなくないっすか?
せっかくガラスフュージングを学んで毎日電気炉に向かってるのに・・・
オリジナリティーを追求するならガラスの方じゃない?
というわけで今回はオリジナリティーを出すなら元のガラスから作ればいいよねということで、実際に僕がやってみた方法を書いてみたいと思います。
今回の記事内容を動画でご覧いただけます
元の板ガラスから制作すれば唯一無二やん
ガラスフュージング用のガラスは販売されてるものを使うしか方法はありません。
(中には訳の分からん情報に踊らされて、再加熱前提で作られてないガラスを使う方もいらっしゃるのですが、悪いことは言わん。この先困るぞ、やめとけ。)
となると色の種類であったり、カットしたガラスの配置デザインで作品を制作することになります。
そりゃ他の誰かと被ることもでてきますよね。
そこで・・・
その購入したガラスに手を加えてカットしたり配置したりする元のガラスを自分で作っちゃえば他の人と被ることってほぼ無くないっすか。
そういうことなのです。
もちろん購入したガラスにガラスパウダーやフリット、ストリンガーを使ってオリジナリティーを出していくのが導入しやすい方法なのですが、今回はもう一段階プラスしたガラスパウダーとパーフェクトジェルを使ったオリジナル元板ガラスの作り方をやってみたので紹介いたします。
ガラスの上でポーリングアート!?
アクリル絵の具などにメディウムを入れてドロっとさせて色を重ねてジャーってキャンバスに流して液体が流れる模様をアートにするポーリングアート。
そう。これ白いキャンバスの上ではなく、ガラスの上でやってそのまま焼成したらポーリングアートガラスが作れるんじゃね?が発端。
もちろん液体の流れは自由自在だからオリジナルの元板ガラスを作ることができるよね。
ガラスパウダーとパーフェクトジェルで描くガラス
さぁこのガラスでポーリングアート。
絵の具の代わりとなるのはフュージング用のガラスパウダー。もちろん色もたくさん種類があって絵の具に劣ることはない。
そしてポーリングアートで使うメディウム代わりに使うのがパーフェクトジェル。
このドロッとした液体がええ感じです。
そして今回用意したガラスパウダーが・・・
ブルズアイ(COE90)
0120 カナリアイエロー
0114 コバルトブルー
0132 ドリフトウッドグレー
この3色を使って描いてみます。
まずはこの3色のガラスパウダーとパーフェクトジェルを混ぜ合わせます。
混ぜる比率は割と適当。流れればいいのであまり神経質にならなくてOKよ
3色分用意出来たら、合わせていきます。
上から上から注いでいけばOK
あとはガラスの上にジャーっと流し(もちろん流し方も自由)
ガラス全体に広がるように傾けながら伸ばしていく(この時に模様が変化するのも良き)
上からまた垂らしたり、竹串などで引っ掻いたりして模様に変化をつけても面白いよ。
綺麗な模様のガラスの元ができあがりました。
パーフェクトジェル
パーフェクトジェル(フュージングジェル) ガラスフリット、ガラスパウダーに混ぜて使用するジェルです。 パウダーやフリットを使って立体的なガラスフュージング作品を作ることが出来ます。 内容量:180g
キルンキング160NF(PCRII付属)
家庭用ガラスフュージング小型電気炉の決定版。フルプログラムコントローラーですべてのキルンワークに対応します。 プログラムコントローラーが独立したタイプで 4パターン(1プログラム8セグメント)の焼成プログラムの入力が可能です。
いざ焼成!!この技法を成功させる3つのコツ
「さぁ、あとは電気炉で焼成するだけ!」と言いたいところなのですが、実はこのパーフェクトジェルを使った時のガラスの焼成は通常通りに焼成すると、表面が裂けたり泡になったりと失敗しちゃうことがあるんですよね。
でも、安心してください。このパーフェクトジェルを使ったポーリングアートガラスを上手に焼成するための3つのコツを伝授いたします。
1.ジェルの水分をしっかり飛ばす
2.トップ温度に上げる前にキープ時間を入れる
3.キープ後、トップ温度までをゆっくり上げる
そしてこの3つのコツを使った今回の焼成プログラムがこちら・・・
ガラスサイズ10cm角 厚み3mm+パウダー層
1. 660℃まで3時間半で上げる
2. 660℃で1時間キープ
3. 730℃まで45分で上げる
4. 730℃で10分キープ
5. 482℃まで下げて1時間キープ
6. 371℃まで1時間半で下げる
1. ジェルの水分をしっかり飛ばす
このパーフェクトジェル。もちろん液体ですので水分が含まれております。
ガラスフュージングではこの水分というのがクセ者で、この水分が熱せられて水蒸気となりガラスに風船ができたり、破裂した跡がガラスに残っちゃったりとガラスフュージングに水分は禁物。
なのでまず乾燥が大事なのですが・・・
このジェルはドロっとした液体だけに完全に乾かすのに自然乾燥だと丸1日以上かかかってしまいます。
もちろんそんなに時間はかけてられませんよね。
そこで・・・
電気炉での初期加熱段階で水分を完全に飛ばしちゃう作戦
そうです。加熱すりゃもちろん水分は飛んでいきますよね。
なのでジェルでこんもりしたガラスをそのまま電気炉に入れて焼成します。
660℃まで3時間半で上げる今回のような10cm角サイズのガラス板の焼成だともっと短い時間(660℃まで2時間もかければ十分)で良いのですが、完全にジェルの水分を飛ばすため660℃まで3時間半という時間をかけます。
これだけ時間を掛ければさすがにジェルの水分も飛んでいきますよね。
2. トップ温度にあげる前にキープ時間を入れる
660℃まで3時間半で上げたら、そこで1時間キープ。
これは通常のガラスフュージングでも大切なことなのですが、これからガラスの形状を決めるトップ温度まで上げる前に、ガラス全体の温度を均一にしておこうということ。
ガラスを加熱していくともちろんガラスの表面や熱源に近い部分からガラスが温まり、ガラス内部や中央部分との温度差が出てしまいます。
電気炉表記がたとえ660℃になっていたとしても、ガラス全体の温度はまだ660℃に到達してない部分があります。
そこでこの温度でキープを入れて、全体を660℃にしようということなんです。
もしガラス自体に温度差があるままトップ温度まで上げてしまうと、自分で狙った形状にガラスが溶けてなかったり、部分的に溶けすぎたり曲がりすぎたり・・・
なんてことが起こったりします。
とくにガラスのサイズが大きくなったり、部分的にパーツをのせたりなど複雑な形状になればなるほどガラス自体に温度差ができやすいので、ここでのキープ時間は大切です。
当然、今回は平らなガラスではありますが、板ガラス、ガラスパウダーとジェルの層と溶け具合の違うものとの溶着となりますので、トップ温度に上げる前にガラス全体の温度を均一にしておきましょう。
3. トップ温度までゆっくり上げる
いよいよトップ温度まで温度を上げて板ガラスとジェルで混ぜたガラスパウダーガラスを一体化させていくわけなんですが、ここで通常のガラスフュージングとは違う注意点が・・・
トップ温度までをゆっくりめで上げること
通常今回の10cm角サイズの板であれば660℃からトップ温度まで20~30分かければ十分なのですが、今回僕がかけた時間は45分。
これはガラスパウダーとジェルが混ざったものを溶かすと、やはりベースとなる板ガラスとは溶け具合が違うんですね。
なので急いで温度を上げちゃうとパウダー層が溶ける過程で裂けちゃったり、めくれ上がってしまう可能性があります。
なのでここは慌てずじっくりベースとなる板ガラスにジワジワ溶着させていくイメージでいつもより時間を掛けてトップ温度にあげていきます。
トップ温度でしっかりと溶着されてるのを確認したら、あとは通常のガラスフュージングと同じ要領で温度を下げていけばOK。
オリジナルの板ガラスの完成
キレイに焼成できました。この模様は唯一無二!(逆に全く同じものは2度と作れないがw)
こういったもとになるガラスを制作するようになれば、今はただ四角くカットして並べて焼成するしかしてないとしても、オリジナリティーのある作品にすることができるよね。
実際に組み合わせてガラス皿を作ってみた
今回は2種類のポーリングアートガラス板を作ってみたので、このガラスを元に簡単なレイアウトでガラス皿を作ってみました。
作った板ガラスを真っ四角にカットし、互い違い9個並べて正方形に。
そのガラスを加工用にホワイト(Bullseye 0113 White)のガラスを並べて、上にクリアガラス(Bullseye 1100TEKTA)を乗せました。
みなさんがよく使うベーシックレイアウトの技法ですね。
ガラスを四角くカットしたものを並べるだけですので、初心者の方でも割とやり易い並べ方だと思います。
まずはこの板を780℃のフルフュージングで焼成。
ガラスの輪郭は丸くなり、かわいいプレートになりました。
ここから「カーブプレート145」モールドに「パーフェクトプライマー」をスプレーして、その上に出来上がったガラスプレートを置いて、660℃でゆっくりスランピング。
はい。いい感じ。
どうですか?唯一無二のカラーリングのオリジナルのガラス皿の完成です。
カーブプレート145
フュージング、スランピングモールドのカーブプレート145角です。 少し大きめのカーブプレートで、「キルンキング160」に入れることが出来る最大サイズモールドです。 ※クイックファイヤーには入りませんのでご注意下さい。 ゆるやかなカーブが特徴で、和風皿、プチケーキ皿など使い道満載です。 磁器製モールドのため表面が凹凸がなく、よりなめらかなので焼成後のガラス表面がきれいに仕上がります。
元のガラスから制作することの大切さ
ガラスフュージングを楽しむ方が増えて嬉しい一方、やはりみなさん同じガラスを使うので独自性を出すのに苦労されてるかと思います。
なかにはキレイな模様のガラスだからとそれを丸く焼成するだけでOKになっちゃってる人も増えているのも現状です。
電気炉をもってるのに加工するだけというのは、ほんともったいないなぁと思います。
たくさんの色、たくさんの形状があるガラス工芸用のガラス。
どう想像し、どう組み合わせ、どう焼成し、自分の作りたい物、表現を追求しそれを形にしていくか。これがガラスフュージングの醍醐味だと思います。
みなさんもいろんなガラス、技法を駆使してご自身のガラスを作ってくださいね。
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