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焼く前のガラス、ちゃんと洗えてる?|ブルズアイ社「Glass Cleaning Basics」をつぎやん流に読んでみた

はじめての人へ

こないだガラスカットの資料を紹介したブルズアイ社のサイト、実はまだ隣に資料が置いてありまして。

今度は「Glass Cleaning Basics(ガラス洗浄の基本)」。たった1ページです。

ガラスの洗い方に1ページも要る?って思うでしょ。僕も思いました。

でも読んでみたら、「洗う」んやなくて「失透させへんための一連の作法」 が書いてあって、これがなかなかに深い。

そう、「ガラスフュージングで焼成前はガラスをキレイに!」というのはみんな知ってるけど、「どうやってきれいに」 ってあまり知られてないんです。

ガラスをキレイにしとかないと失透する可能性があります。

失透って、焼いたあとにガラスの表面がモヤッと白く曇るアレです。

ガラスフュージングをやってる人なら、一回は「あれ、私の指紋…?」ってなったことあるんじゃないかな。
あれ、焼成温度のせいだけやないんです。焼く前に何が付いてたか でも起きる。

なので今回もつぎやん流に、「で、なんでそうなるの?」まで一緒に考えてみます。

大前提:洗うのは「汚れを落とす」ためやなくて「焼いたあとに出てこさせない」ため

ガラスに付いてたものは焼いても消えない:焼く前の汚れがそのまま失透になる図

資料の冒頭にこう書いてあります。

焼く前に洗うのは、カッティングオイル、皮脂、ミネラル、塩分、ホコリ、繊維、シールの糊、指紋、ペンの跡を取り除くため。

洗わずに焼くと、それがそのまま焼き上がりに見えたり、失透(表面に結晶が育つ現象)を起こす。

ポイントは 「ガラスに付いてたものは、焼いても消えないものがある」 ということ。

ガラスは800℃近くまで上がりますけど、指紋の皮脂やシールの糊は燃えてなくなるどころか、表面のガラスと反応して「結晶が育つきっかけ」になってしまう。

これが失透の正体のひとつです。

つまり洗浄は、掃除やなくて 仕込み なんですね。焼く前に済ませておく工程のひとつ。

そう思って読むと、この1ページの細かさに納得がいきます。

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【洗剤編】食器用洗剤、実はアカン

ガラスクリーナーの条件「浮かせて、残さない」:使わない洗剤3つとテストの流れ

「落とす」だけやなくて「残さない」

ここがこの資料でいちばん大事なところやと思います。

ガラス洗浄に求めるのは、油・ミネラル・有機物を浮かせること。ただし、あとに残留物を残さないこと。

この2つ目が曲者で、資料には「合成洗剤、アンモニア、変性アルコールは、失透の原因になる残留物を残す」とはっきり書かれてます。

具体的にアカンとされてるのは、こういう家庭用品。

  • 食器用洗剤
  • 住居用のマルチクリーナー
  • 一部のガラスクリーナー(アンモニア入りのもの)

え、食器用洗剤アカンの?って思いますよね。割と使ってる人も多いかと・・・

でも理屈は単純で、食器用洗剤って すすいで流す前提 で作られてるんです。ガラスの板をタオルで拭くだけやと、界面活性剤が薄ーく膜になって残る。

それを焼くと、膜が結晶の種になる。食器は水でジャバジャバ流すから問題ないけど、板ガラスはそうはいかへん、という話です。

ブルズアイ社が使ってるのは「酢酸系のクリーナー」

じゃあブルズアイ社は何で洗ってるの?というと、Spartan社の「Concentrated Window Cleaner」という業務用の濃縮ガラスクリーナーです。「業務用」と聞くと強そうな薬品を想像するかもしれませんが、逆です。

メーカーの成分表(SDS)を見ると、中身はこう。

  • 水…60〜80%
  • イソプロパノール(アルコール)…10〜30%
  • 酢酸…1〜5%
  • あとは、ごく微量の成分と香料

つまり 「酢酸+イソプロパノール」のクリーナー なんです。

アンモニアなし、合成洗剤で落とすタイプでもない。酢酸が水垢やミネラルを溶かして、イソプロパノールが油分を浮かせて、両方とも乾けば飛んでいくので残らない。

さっきの「浮かせて、残さない」を、そのまま形にしたような中身です。

で、ここで白状すると、グラクラマーケットで扱ってる「パーフェクトクリーナー」も、成分は 酢酸・イソプロパノール。ブルズアイ社が使ってるものと、考え方も主成分も同じタイプです。

もちろんブルズアイ社がこの商品をテストしたわけやないので「ブルズアイ推奨」とは言えませんけど、「業務用の特別なもんが要るんちゃうか」と心配してた人は、安心してもらっていいと思います。

ま、他にもいろんなクリーナーがあると思うのですが、どのクリーナーを使うにしても、資料はこう言ってます。

市販品は必ず自分でテストしてから。 しかも「透明ガラスとオパールセント(不透明)ガラスで別々にテストしなさい」と。

これ、さすが材料メーカーやなと思いました。透明と不透明で表面の成分が違うので、同じクリーナーでも反応が変わることがある。透明で大丈夫やったからオパールセントも大丈夫、とは限らんのですね。

テストのやり方は簡単で、いつも使ってるガラスの端材を、候補のクリーナーで洗って焼いてみるだけ。曇らなければ合格。曇ったらそのクリーナーは使っちゃダメよということ。

パーフェクトクリーナー

グラクラマーケット

パーフェクトクリーナー

フュージング前のガラス洗浄用。酢酸・イソプロパノール系、アンモニア不使用。詰替えボトルもあります。

ショップで見る

【タオル編】ペーパータオル、実はアカン

白い綿のタオルを、たくさん

拭くものは 毛羽立たない綿のキッチンタオル。色は白がおすすめ、と書いてあります。

理由は、汚れがよく見えるから。黒いタオルやと、いつ汚れたか分からへんもんね。

そして「たくさん用意して、作業中どんどん替える」こと。
汚れたタオルで拭くと、ガラスの汚れをAからBへ引っ越しさせてるだけになります。落としたつもりで塗り広げてる、というやつです。

ペーパータオルを使わない理由

ブルズアイ社はペーパータオルでガラスを拭きません。理由が3つ。

  1. すぐボロボロになる(強く拭けない)
  2. 添加物が入っていることがある(それが残留物になる)
  3. 資源のムダ

1と2は、さっきの「残さない」の話とつながってますね。紙の繊維や薬剤がガラスに残る。しかも拭く力をかけられへんから、そもそも汚れが落ちきらない。

【手順編】洗う順番には理由がある

ブルズアイ式・焼く前のガラス洗浄4ステップの図

ここからが本題。ブルズアイ社の洗い方は、順番が決まってます。

ステップ1:まずシールの糊とペンの跡だけ、先に片づける

いきなり全体を洗わない。最初にシール跡とペン跡だけ を落とします。

理由は、この2つが「めちゃくちゃ広がりやすい」から。糊やインクを全体拭きの中で一緒に拭くと、ガラス全面にうすーく伸ばしてしまう。だから隔離して先に処理する。

やり方はこう。

  • 糊・ペン跡にクリーナーを吹きかけて、1〜2分置く(浮かせる時間)
  • この工程専用のタオル で拭き取る。このタオルは他の工程に使わない
  • 明るい背景・暗い背景の両方で、いろんな角度からチェック。表・裏・小口(側面)まで
  • 残ってたら、もう一回、今度は少し強めに

「専用タオル」というのがミソです。糊を拭いたタオルで次に全体を拭いたら、また糊が引っ越しますからね。

ステップ2:裏面 → 表面 → 小口の順に、「拭いて、から拭き」

シール跡が片づいたら、いよいよ全体。

  • 裏面全体にクリーナーを吹きかける
  • きれいなタオルで しっかり力を入れて 拭く
  • このとき、素手でガラスに触れないように
  • 拭き終わったら、乾いた別のタオルでから拭き して仕上げる
  • 同じことを表面と小口でも繰り返す
  • 最後にいろんな角度から検品。残ってたら、もう一度強めに

ここで「なんで、から拭きが要るの?」ってなりますよね。
資料にちゃんと書いてあって、残ったクリーナーそのものが失透の原因になる から。

洗剤の話と同じで、どんなにええクリーナーでも、乾いて膜になったら残留物です。から拭きは「クリーナーを取り除く工程」なんですね。拭いて終わり、やない。

「素手で触らない」も同じ理屈。洗った直後にペタッと指紋つけたら、洗った意味がなくなります。

小口を削ったガラスは、汚れが取れにくい

ちょっと面白い一文がありました。

コールドワークで削った小口は、ザラついた面に汚れが入り込むので、特に洗いにくい。滑らかに磨いた小口のほうが洗いやすい。

グラインダーで削った面って、目に見えへんレベルでギザギザなんです。そこに削りカスや水の中の成分が入り込む。

そういう作品は、小口を念入りに。あるいは、削った面を一段細かく磨いておくと洗浄がラクになる、という話です。

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【洗ったあと編】きれいにしても、触ったら終わり

洗ったあとにガラスを汚さない4つのポイントの図

洗浄の資料やのに、資料の後半はほぼ「洗ったあとの話」。ここがいちばん「そういうことやったんか」でした。

洗ったら、すぐ炉に入れる

洗ったガラスは、そのまま電気炉に入れるのがベスト。ホコリや汚れから守るためです。
何時間か置いてから焼くなら、カバーをかけておく。せっかく洗ったガラスの上に、工房のホコリが降り積もるのを防ぐわけですね。

持つのは端だけ、手はきれいに、そして使い捨て手袋はNG

炉に入れるときは 小口だけを持つ。当たり前ですけど、洗った面を指で持ったら指紋がつきます。手もきれいに。

意外やったのが、ブルズアイ社は使い捨て手袋を使わない ということ。
理由は、手袋の表面に付いてるパウダー(すべり止めの粉)が失透の原因になるから。「手袋したら安心」と思いきや、手袋によっては逆な場合があるんですね。

工房が汚いと、ガラスもきれいにならん

そして最後に、けっこう耳が痛いやつ。

作業場がきれいなら、ガラスもきれいに保ちやすい。

こまめに掃除機をかけて、作業台を拭く。

そして、失透の原因になる粉ものを、ガラスの作業から隔離する。資料に挙がってるのはこの辺。

  • 陶芸の粘土や釉薬の粉
  • モールドづくりの粉
  • 棚板に塗る離型剤の粉
  • 金属の削りカス
  • おがくず
  • セラミックファイバーペーパー、ThinFire(薄い離型紙)の粉

離型剤の粉、心当たりある人多いんじゃないかな。

棚板に離型剤を塗ったあと、そのまま同じ台でガラスを組んでたりしません?あの粉、ガラスに乗って焼かれると、そこだけ曇る場合があります。

【おまけ編】タオルの洗濯にまでルールがある

ここまで読んで「細かっ!」て思ったでしょ。まだあります。タオルの洗濯方法 です。

  • 洗剤は 無香料・無着色 のものを使う
  • しっかりすすぐ
  • 柔軟剤は入れない
  • 乾燥機の柔軟シート(ドライヤーシート)は使わない。普段からシートを使ってる乾燥機で乾かすのもNG
  • 普段の洗濯物とは一緒に洗わない

理屈はもう分かりますよね。柔軟剤や香料は、繊維に「残る」ように作られてる成分です。残るように作られてるものは、タオルからガラスへ移ります。それを焼いたら、もちろん失透の可能性が上がります。

「普段の洗濯物と分ける」のは、逆方向の話もあって、工房のタオルにはガラスの細かい破片が付いてます。それが家族の服に混ざったら困る。双方向の汚染を防ぐ ためです。これはもう、失透対策というより安全対策ですね。

で、今日からどれやります?

全部いっぺんにやろうとすると、たぶん続きません。まず変えるなら、僕のおすすめはこの3つのどれか。

  1. から拭きを足す(今のクリーナーのままでも、乾いたタオルで仕上げるだけ)
  2. シール跡専用のタオルを1枚決める(糊の引っ越しを止める)
  3. 離型剤を塗る場所と、ガラスを組む場所を分ける(粉の隔離)

失透って、焼いてから消そうとするとけっこう大変なんです。以前、焼いてから消す方法をいろいろ実験した記事も書きましたけど、正直、焼く前に洗うほうが100倍ラク

そして何より、失透の原因が「温度」か「汚れ」か分かるようになると、次の一枚で迷わなくなります。これが一番の収穫やと思う。原因が分かれば、ガラスが嫌いにならずに済みますから。

こんな細かい資料まで無料で置いてくれるブルズアイ社、やっぱりええ会社やなぁ。今回も、ありがたく読ませてもらいました。

出典:Bullseye Glass Co.「Glass Cleaning Basics」(PDF)/Spartan Chemical Company「Concentrated Window Cleaner」Safety Data Sheet(2025-12-01改訂)※原文の内容をもとに、順番を組み替え、つぎやんの解釈と補足を加えて構成しています。

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