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ガラスカットが上手くなるコツ|ブルズアイ社の資料2本を、つぎやん流に読んでみた

ガラスカット

こないだブルズアイ社のサイトを漁ってたら、ガラスカットの資料が2本並んで置いてありました。

  • 「Glass Cutting Basics(ガラスカットの基本)」…1ページ
  • 「12 Ways to Improve Your Cutting(ガラスカットが上手くなる12の方法)」…2ページ
    ※出典リンクはこの記事の最下段にあります

12のほうを書いたのは、オーストリアのクラムザッハにあるガラス専門学校のRudi Gritschさん。

ブルズアイ社の研究部門のディレクターをやってた人で、しかも世界レベルのガラスカット使い。
そんな人のノウハウが、たった2ページにギュッとまとめられて無料で置いてある。太っ腹すぎませんか。

読んでみたら「そんなん知ってるわ!」て項目もあるんですけど、「え、そこ理由あったんや」ていうのが何個も混ざってて、これはガラスカットに悩んでるみなさんにお役に立てるのではと・・・。

なので今回は、この2本を合体させて、つぎやん流に並べ替えてみます。原文をそのまま訳すより、「で、なんでそうなるの?」まで一緒に考えたほうがみんな分かりやすいんじゃないかと。

大前提:ガラスカッターは「切ってない」

基本のほうのPDFは、いきなりこの一文から始まります。

「ガラスカッターは、ガラスを鋸で挽いてるわけではない」

カッターのホイールがやってるのは、表面を転がりながら浅い亀裂(スコアライン)を1本つくること。

それだけなんよね。その亀裂がガラス表面の張力を断ち切るので、線の両側に下向きの力をかけると、パチンと分かれてくれる。

つまりガラスカットは、①きれいな傷を入れる作業と、②その傷どおりに割れを走らせる作業という、まったく別の2つでできてるんですね。

ここが腹落ちすると、あとの話が全部つながります。

Rudiさんの12個も、よく見たら全部このどっちかの話。そう思って読むと、バラバラの豆知識が急に一本の線になります。

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【基礎編】ええスコアは、見て分かるし、聞いて分かる

強すぎても、弱すぎてもアカン

割れ口がきれいになるかどうかは、スコアを入れるときの圧で決まると書かれてます。

  • 強すぎる…線が白くザラついて、細かい欠けやカスが飛ぶ
  • 弱すぎる…線が途切れて、思わぬところで割れる

あの「白くザラッとした線」、私そう!なんて思ってる方もいるんじゃない?

逆なんす。あれは入れすぎのサインです。欠けが飛んでるということは、亀裂の先っぽがガタガタになってるということなので、そこから割れが素直に走るわけがないよね。

ええスコアの見た目と、音

正解の見た目は、浅く、均一で、途切れがなくて、欠けが出てない線。

そして音でも分かります。 チーッとかジーッというファスナーみたいな音が、きつくもザラつきもせず、均一に続くのが正解。ガリガリ、ジャリジャリいうてたら圧が強すぎます。

ただ面白いのが、12のほうにはこう書いてあること。オパールセントのガラスは、正しい圧で切ると音がまったくしないことがある。 無音=失敗ちゃうんですね。

これ結構大事で白のガラス(0013オパックホワイトとか0113ホワイトとか)なんかは音がしないことが多いです。
知らんかったら不安になるよね。

押しても引いても、どっちでもええ

ガラスカットは押切り、それとも引き切り、どっちが正解なの?
これよく聞かれます。

正解が書いてありましたよ。
カッターは押しても引いても、どっちでもいい。 方向より、均一な圧と均一なスピードのほうがずっと大事、と。

姿勢も「ホイールをガラスに垂直に保ったまま、十分で均一な圧をかけられる姿勢なら、どんな構えでも正解」。フォームより結果です。

そのうえで守ることが1つ。スコアはガラスの端まで抜くこと。 途中で止めると、そこから先は割れの案内板が無い状態になるので、行き先はガラスの気分次第になります。

【道具編】傷を入れる側の道具

カッターは、買える範囲でいちばんええやつを

いきなり身も蓋もない話から始まります。でも理由がええんです。「正確に、ラクに切れるカッターなら、長い目で見たらお金が浮く」。

これ、ほんまにそう。カットを失敗するたびに減ってるのは、時間じゃなくてガラスそのものですからね。

選ぶポイントは2つ。持ちやすいハンドルと、カーバイド(超硬)の長持ちするホイール。特に、人差し指を乗せられるくぼみがあると刃の真上に体重が乗るし、ハウジングが幅広だと中指を添えて進む方向をガイドできる。板ガラス用の安いカッターは、だいたいこのどっちも無いです。

とは書いてありますが、僕はこれ使ってます。

オイルは「あったほうがいい」やなくて「必須」

自動給油式のカッターに入れる、カッターの先をオイルに浸ける、刷毛で塗る。どれでもOK。とにかく乾いたまま切らない。

そしてフュージングをやる僕らには、もう一個だけ絶対に外せない注意があります。

焼く前に、オイルは完全に落とすこと。 残ったまま電気炉に入れると、失透(デビトリフィケーション)の原因になります。

表面が白くモヤっとするアレです。ステンドの人には関係ない話やけど、フュージングでは死活問題。

もちろんカッティングオイルだけでなく、焼成前のガラスはキレイにするのは基本ですよ。

ホイールは「大きさ」と「角度」で決まる

ここ、ちょっとマニアックな話ですが、参考までに。

まずホイールが小さいほど、少ない力で傷が入る。細いペン先ほど紙に食い込みやすいのと同じ理屈ですね。アートガラスには直径2.5mmくらい(1/10インチ)の小径ホイールが向いてる、と書かれてます。

で、もう一個が刃の角度。ここは知らん人多いんちゃうかな。

  • 120°…2mmくらいの薄い板に
  • 135°…10mm厚くらいまで、いちばん万能
  • 160°…10mmを超える厚いガラスに

角度が鈍い(数字が大きい)ほど、食い込ませるのに力がいる代わりに、深くてしっかりした傷になる。薄い板に160°で挑むと、傷が入る前にガラスのほうが負けるわけです。ふだん僕らが使ってる3mm・6mmのガラスなら、135°でだいたい間に合います。

ま、皆さんがカットするガラスで通常使うガラスカッターであればそこまで気にする必要はありませんが、参考まで。

【準備編】切る前に、もう決まってることがある

ガラスが冷たい日は、まず温める

「冷たいガラスは切りにくくなる。快適な室温がいちばん」。冬の作業場、心当たりありませんか。僕はあります。冬になった途端カットが下手になった気がしてたんですけど、腕やなくてガラスの温度やったんかい、と。

ツルツルな面にスコアを入れる

アートガラスは、表と裏で表面のなめらかさが違うことがよくあります。ツルッとしてるほうに傷を入れたほうが、入りやすいし、割れもきれいになる。

ザラついた面って、要は細かい凹凸があるということ。

その上をホイールが走ると、深さが一定になりません。深い浅いがある傷は、さっきの「途切れたスコア」と似た状態なので、割れが素直に走ってくれない。カットする前に、両面を指の腹でなでてみてください。

傷を入れたら、すぐ割る

これ、12個の最後に置かれてるんですけど、割とみなさんの「知らんかった!」度が高かったやつです。

スコアを入れたまま放置すると、その線に沿って細かいヒビが枝分かれしはじめる。そうなるともう、きれいに走らせるのはほぼ無理。

亀裂の先っぽって、ガラスからしたら力がかかりっぱなしで踏ん張ってる状態なんですよ。そこに空気中の水分が入り込むと、ヒビはじわじわ勝手に伸びていく。スコア線は、置いといたら熟成する系のものではない。 入れたら、割る。

「全部のガラスカット線を先に引いてから、まとめて割る」ていう段取り、実はいちばんやったらアカンやつでした。

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【体の使い方編】手で切るな、体で切れ

立って、台から少し離れる

座って手首だけで切ってた人、いるんじゃないかな。

Rudiさんの指示はけっこう具体的で、立って、作業台から少し離れて、ホイールはガラスに対して垂直、ハンドルはまっすぐか、ほんの少し自分側に倒す。そして腕や手だけやなくて、体ごと動かす。

なんでか。
手首を支点にして動かすと、軌道が弧を描くうえに、途中で圧が抜けるからです。

基本の資料が言うてた「均一な圧・均一なスピード」を実現する方法が、これなんですね。姿勢は自由。でも均一さは体でしか出せない。

ちなみにキツいカーブを切るときは、作業台の角を使って、自分がテーブルのまわりを移動しながら切るんやそうです。ガラスを回すんやなくて自分が回る。

賢い!なるほどな。

「ちょうどええ圧」を、数字で見る方法

で、このPDFで僕がいちばんテンション上がったのがこれ。

「カッターやガラスによって必要な圧を比べたい? はかりの上にガラスを置いて、その状態でスコアしてみ」

天才か。ふだん「ちょうどええ力加減」としか言えへんかったものが、グラム数になって画面に出てくるわけです。

上手くカット出来た時の力加減をはかりの上で再現して数値化しておく

上手くカット出来ない時、今の自分の力加減はどうなんかを見ることができますね。

【割り方編】割れは、いつでも「ラクなほう」へ逃げる

ここからは②の「傷どおりに割る」側の話です。

まずは割り出しの基本

やることは「スコア線の両側に、下向きの力をかける」。これだけです。指でも、定規でも、ブレイキングプライヤーでも、支点になるものなら何でもいい。

ランニングプライヤーが便利なのは、下側のジョーが、力を線の真ん中に均等に集めてくれるから。ギュッと握るだけできれいに走る道具なんですね。

そしてプライヤーを当てる位置にもコツがあって、スコアを引き終わったほうの端から走らせるのがベスト、と書かれてます。

スコア線の左右は、同じ量のガラスにする

ここからが12のほう。そしてこれがいちばん実用的やと思いました。

スコア線の左右でガラスの量が偏ってると、割れは自然とガラスが少ないほうへ逃げます。 結果、断面が垂直に落ちてくれなくて、裏側で外に広がった斜めの面になる。「表はぴったりやのに裏がズレてる」の正体はこれです。

で、その対策がめちゃくちゃ賢い。細い帯を何本も取りたいときは、ほしい幅の4倍の板から始めて、まず半分。次にそれぞれをまた半分。

こうすると、どの段階でも刃の左右が必ず同じ量になる。端から順番に細く切っていく、あの一番やりがちな切り方とは真逆ですね。この方法なら、ガラスの厚みと同じ幅まで、きれいな帯が取れると書いてあります。6mm厚なら6mm幅まで。

タッピングは、できるだけしない

カッターのお尻でコンコン叩くやつ。あれはほぼ確実に断面がギザギザになります。 どうしても必要なときは、スコア線の真下を叩くこと。ズレたところを叩くと、割れがそこから斜めに走って、また断面が広がります。

ランニングプライヤーが手元にあるなら、まずそっちを使いましょう。プライヤーの選び方はこっちの記事で比べてます。

2本の資料が、そろって「絶対アカン」と書いてる唯一のこと

同じ線を、二度なぞらない

読み比べてて気づいたんですけど、1ページの基本編と、2ページの12個。両方に「するな」と書かれてる項目は、これ1個だけなんです。それくらい大事、ということやと思います。

スコアを失敗しても、同じ線を同じ面からもう一回なぞったらアカン。

ガラスがえぐれるし、ホイールが傷むし、きれいに割れる確率も下がります。

1本目の傷でできた細かいガラスの欠片の上を、超硬の刃が転がることになるので、そら刃も痛むわなという話ですね。

どうしてもその線で割らなあかんときの逃げ道も一応あって、ガラスを裏返して、同じ線を裏からそーっと引く。そのあと普通に割る。あくまで最終手段だけどね。

で、今からどれやります?

全部いっぺんにやろうとすると、たぶん何も変わりません。まず実践するなら、僕のおすすめはこの3つのどれか。

  1. スコアを入れたら、すぐ割る(今日から無料でできて、効果がいちばん分かりやすい)
  2. 細い帯は「半分の半分」で取る(切る順番を変えるだけ)
  3. はかりの上でスコアしてみる(自分の「ちょうどええ力」が数字になる)

フュージングって、焼く前の形がそのまま焼き上がりに出ます。カットが1mm歪んでたら、作品も1mm歪む。逆に言うと、カットがきれいになった日から、作品はいきなりきれいになる。 電気炉を買い替えるより、たぶん先に効きます。

それにしても、こういう資料をポンと無料で置いてくれるブルズアイ社、ほんまにええ会社やなと思います。ガラス屋が「使い方」を配ってくれるから、僕らは失敗を1個減らせるわけで。

これは僕も見習いたいと思います。
ガラスカットに悩んでるみんなに届くといいな。

出典:Bullseye Glass Co.
・「Glass Cutting Basics」(PDF)
・「12 Ways to Improve Your Cutting」Rudi Gritsch/Glasfachschule Kramsach(PDF)
※原文の内容をもとに、順番を組み替え、つぎやんの解釈と補足を加えて構成しています。

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