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ピンクや赤が発色しない原因は「ゴールドホールド」かも|ブルズアイの金発色ガラスの焼き方

色と変色

【2026年10月追記】この記事のもとになったブルズアイ社の公式資料が改訂され、ゴールドホールドの基本の温度が1200°F(649℃)に変わりました。この記事も新しい内容に合わせて書き直しています。何が変わったかは「ゴールドホールドの温度が変わりました|基本は1200°F(649℃)で2時間キープ【ブルズアイ公式資料が改訂】」にまとめました。

「ブルズアイのピンクを焼いたのに、写真みたいな色にならなかった」
「焼き上がりが青っぽくて、斑点みたいなムラが残ってる」

これ、ガラスが不良品だったわけじゃないんです。焼成スケジュールが原因であることがほとんどです。

原因になっているのは「ゴールドホールド(Gold Hold)」。

ブルズアイ社が公式に指定している焼成の手順で、これを入れないと色が出ないガラスがあらかじめ決まっています。

ブルズアイは「Gold Hold: Firing Transparent Pink, Purple, and Coral Colors」という資料(2026年に改訂。前のタイトルは「Properly Pink, Purple & More」)を公開していて、対象の色から焼成スケジュール、自分の窯を確かめるテスト方法まで、けっこう細かく書いてあります。ただ英語なので、日本語で読める情報がびっくりするくらい少ない。

というわけで今回は、その公式資料の中身を材料屋の目線で整理してみます。

ゴールドホールドって何?

公式の「GOLD HOLD BASICS」はこの2行です。

  • 初回焼成の昇温の途中で、1200°F(649℃)で2時間キープする(直径35cmまでの作品の場合)
  • 対象リストにあるすべての形状に適用(板ガラス・フリット・ビレットなど)

やること自体はシンプルですよね。昇温の途中で1回止まるだけ。でもこの2時間があるかないかで、色がまったく別物になります。

35cm角を超える大きい作品で気泡抜きも兼ねたいときは、1225°F(663℃)を使うこともあります。また、濃いめの色(クランベリーピンク・ゴールドパープルなど)は663℃でも多くの窯でちゃんと発色します。このあたりは後で説明しますね。

なんで「ゴールド」なの?

簡単に言えば対象になるガラスが、金(ゴールド)で色を出しているからです。

ブルズアイの言い方だと「ピンク/パープル/コーラルのファミリーは、金を発色剤にして作られている」。そしてこれらは「ストライカー」、つまりコントロールされた熱の働きかけを受けてはじめて色が出るガラスなんです。

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焼く前は「色が眠っている」

ストライカーなので、届いた板を見て「あれ?」となることがあります。

  • 1205 ライトコーラル → 焼く前はほぼ透明。クリアガラスと見分けがつかないレベル
  • 1215 ライトピンク → 焼く前はやや青みがかっていて、シートに薄い斑点が見えることも
  • ティント系(1823・1824・1831)→ ほとんど透明。うっすら青緑や青紫がかって見えるだけ

ティント系のガラスに関しては、もう「これ本当にピンクや赤なん?」ってなるレベルです。でもこれで正常。焼くと化けるんですよね。

なぜ2時間も止める必要があるのか

ここがいちばん面白いところなんですが、金が含まれてるガラスの色って「熱で溶けて出てくる」んじゃないんです。「その温度帯にいる時間で育つ」んです。

だから最高温度をいくら高くしても、ゴールドホールドの温度帯をスーッと素通りしてしまったら色は出てきません。急いで焼くほど色が出ないという、ちょっと不思議な性質です。

その証拠に、公式資料には「最初の昇温レートは、金発色のガラスをうまくストライクさせるうえで重要な要素ではない」とはっきり書いてあります。

速く上げようが遅く上げようが関係ない。大事なのはその温度帯にどれだけ居たかだけ。昇温レートは、作品の大きさやデザインに合わせて自由に決めていいということですね。

公式資料の写真がまた分かりやすくて、同じ温度でも「2時間キープ」と「30分キープ」で並べてあります。30分のほうは、色が出きっていない状態。温度は合っているのに、時間が足りないだけで別の色になるんです。

やらないとどうなるか

  • 色が弱い、または出ない
  • 青やブラウンのかぶりが出る
  • ムラっぽい、斑点っぽい仕上がりになる

「思ってた色と違う」の正体、だいたいこれです。ガラスのせいでも腕のせいでもなく、ゴールドホールドの温度を素通りしただけ。原因がわかると、ちょっとホッとしませんか。

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公式の焼成スケジュール

資料に載っている「Full Fuse Firing Schedule with a Gold Hold」がこちらです。

セグメント昇温レート(毎時)目標温度キープ
1お好みで ※1200°F/649℃2:00
2600°F/333℃1490°F/810℃0:10
3できるだけ速く900°F/482℃—
※ 最初の昇温レートは重要ではないので、作品の規模とデザインに合わせて選んでOK。900°F以降の徐冷は作品の厚みしだいなので、いつものアニールカーブで。

ここでひとつ大事な補足があります。セグメント2の1490°F(810℃)はフルフューズの目安として書かれているだけで、公式資料には「色の発色そのものは、もっと低い温度でもかなり進む」と注記されています。1枚だけ焼くときやタックフュージのときに、とくに関係してくる話ですね。

つまりフルフューズまで上げなくても色は出る。ゴールドホールドさえ入っていれば、そのあとは作りたい形に合わせて温度を選んでいい、ということです。

しかも、35cm角までのフルフューズ・タックフューズなら、この1200°Fの2時間キープが、重ねたガラスの気泡抜き(バブルスクイーズ)も兼ねてくれます。

対象になる色(必須と推奨)

公式資料では、必須と推奨の2グループに分かれています。

品番色名区分
001215ライトピンク必須
001823バーンスカーレットティント必須
001824ルビーレッドティント必須
001831ルビーピンクティント必須
001205ライトコーラル推奨
001234バイオレット推奨
001305サンセットコーラル推奨
001311クランベリーピンク推奨
001332フクシア推奨
001334ゴールドパープル推奨
このほか、特別生産の「透明ストライキングピンク系」は必須、「透明ストライキングパープル系」は推奨です。

ピンクだけじゃなくて、コーラル・バイオレット・パープルまで入っているのがポイントです。「金=ピンク」だと思っていると、バイオレットやゴールドパープルで足をすくわれます。

ちなみに、ブルズアイの色ごとのページを見ると、薄いピンク系(1215・1823・1824・1831・1332)は「1200°F(649℃)が一番安定」、濃い色(1311・1334・1234)は「1225°F(663℃)」と、品番によって書き方が違います。新しい資料でも「濃い色は1225°Fでも多くの窯で1200°Fと同じように発色する」とあるので、濃い色は663℃でも大丈夫。迷ったら649℃にしておけば、どちらもちゃんと発色します。品番ごとの表は新しい記事に載せています。

「必須」の4色がとくに敏感な理由は、次で説明します。

「うちの窯だけ色が出ない」が起きる理由

ちゃんとゴールドホールドを入れたのに色が出ない。これ、実際に起こります。

公式資料の説明はこうです。透明ピンクの一部のロットはとくに敏感で、平均より高温で焼ける窯(温度が高めになってしまう窯)ではうまくストライクしない。そういう窯はゴールドホールドの温度をオーバーシュートしてしまい、結果として青すぎる色になる。

新しい資料で基本の温度が1200°Fに下がったのは、まさにこのため。1200°Fなら、窯が多少高めでもゴールドホールドの温度帯に収まります。

しかも厄介なことに、製造ロットによっても結果が変わります。同じ品番でも、去年買ったシートと今年買ったシートで挙動が違うことがある、ということですね。

だからブルズアイは、とくに35cm角を超える大きい作品を1225°Fで焼くときは、使う窯でテストしてから、と言っています。

公式のテスト手順(35cm角を超える作品の前に)

  1. まだ焼いていないガラスから小片を切る(切りっぱなしの端でOK)。棚板は離型剤か離型紙の切れ端。単層・カバーなしで置く。品番・製造日・使った窯をメモしておく
  2. 下のテスト用スケジュールで焼く(短時間で終わります)
  3. 1225°Fで焼いて、青や茶色っぽい・色が弱い・ムラ・色が出ないなら、窯がゴールドホールドの温度を行き過ぎています。1200°F(649℃)でもう一度テスト
  4. 結果を記録して、そのシートと一緒に保管しておく

「そのシートと一緒にメモを保管」がすごくいいですよね。ガラスって在庫として何年も持っていたりするので、あとから自分を助けてくれます。

テスト用の焼成スケジュール

セグメント昇温レート(毎時)目標温度キープ
1400°F/222℃テスト1:1225°F/663℃
テスト2:1200°F/649℃
2:00
2600°F/333℃1460°F/793℃0:05
3できるだけ速く70°F/21℃—

このスケジュール、よく見ると徐冷が入っていません。公式にも「色を見るためのテストなので、徐冷はいらない」と書いてあります。割れても情報は取れる、という割り切りですね。

タックフュージ前提の作品を作るなら、セグメント2をそのタックの温度・保持時間に置き換えてテストしてもOKだそうです。

35cm角を超える大きい作品のとき

大きい作品は層のあいだに空気が残りやすいので、気泡抜きのキープが必要になります。新しい資料では、そのときは1225°F(663℃)がおすすめ。ただし色によって注意点があります。

  • 濃いめの色(推奨グループ):1225°Fでも、多くの窯で1200°Fと同じように発色する
  • 薄いピンク系(必須グループ):1225°Fでうまくいく窯もあれば、いかない窯もある。使う窯でテスト焼きを
  • 温度が高めの窯:1200°Fに下げれば発色するし、気泡抜きとしてもちゃんと効く

そして公式の結論は「気泡抜きが必要ないなら、1200°Fをおすすめします」。迷ったら1200°F(649℃)です。新しい資料の焼成スケジュールは「ゴールドホールドの温度が変わりました|基本は1200°F(649℃)で2時間キープ【ブルズアイ公式資料が改訂】」にまとめています。

知っておきたい注意点

ゴールドホールドは初回焼成だけ

これはけっこう重要です。公式にはこう書いてあります。

「ゴールドホールドを繰り返すと、一部のスタイルに悪影響が出ることがある。とくにカドミウムで作られた赤・黄・オレンジ」

つまり、一度発色させたあとの2回目・3回目の焼成では、もうゴールドホールドは入れないほうがいい。とくにカドミウム系の赤や黄色を一緒に使っている作品では、余計な長時間キープが別の色を痛めます。ゴールドホールドは「毎回入れるおまじない」ではなくて、初回だけの仕込みなんですね。

そして色は初回焼成で決まってしまい、あとから直せません。だからこそ、事前のテストに手間をかける価値がある、というのが公式のまとめ方です。

フリットやパウダーでも同じ

ゴールドホールドはリストに載っている色のすべての形状に適用されます。板ガラスでもフリットでもパウダーでも、色番号が同じなら必要です。
(僕の体感としてはフリットやパウダーは割と通常の焼き方でも色が出ることが多い)

パウダーを薄く撒いて焼いて「思った色にならへんかった」というとき、粒の細かさのせいだと思いがちなんですが、ゴールドホールドを疑ってみる価値はあります。

ビレットは例外的に安定

おもしろいのがビレット(塊)で、2024年版の公式資料では「金発色のビレットは、板ガラスより発色が安定している。ゴールドホールドを入れて焼くことは推奨するが、事前にテストする必要は観察されていない」としています。

同じ色でも形状で挙動が変わるって、ガラスらしいというか、奥が深いですよね。

グラクラマーケットで扱っている該当色

実物で見てみたい方向けに、うちで扱っている板ガラスを挙げておきます。各ページにも焼成条件を書いてあります。

まとめ

  • ピンク・赤・コーラル・パープルが発色しないのは、焼成スケジュールが原因のことが多い
  • 初回焼成の昇温の途中で1200°F(649℃)を2時間キープ=ゴールドホールド(35cm角を超える作品は1225°Fも選べる)
  • 色は「溶けて出る」のではなく「その温度帯にいる時間で育つ」。昇温レートは重要ではない
  • 窯が高温寄りだと青くなる。だから基本が1200°Fに下がった
  • 濃い色(1311・1334など)は663℃でも多くの窯で発色する。薄いピンク系(1215・1823・1824・1831)は649℃が安全
  • ゴールドホールドは初回だけ。繰り返すとカドミウム系の色を痛める

温度管理って「割れないため」の話だと思われがちなんですが、こうやって狙った色を出すためにも効いてきます。同じガラス、同じ窯でも、時間の使い方ひとつで結果が変わる。

そして「自分の窯が何をしているか」を知っている人ほど、色を狙って出せる。設定した数字を信じるんじゃなくて、小さいテストピースに教えてもらう。ゴールドホールドは、それがそのまま色に出てしまう、わかりやすい例だと思います。

やっぱりガラスって面白いですね。

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