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赤・黄色のガラスは「焼きすぎ」に弱い|ブルズアイ社「Heatwork & Cadmium-Bearing Glass」をつぎやん流に読んでみた【何回まで焼ける?】

はじめての人へ

ガラスカット、ガラス洗浄、気泡の前編・後編、徐冷、タックフューズの徐冷、そしてお皿づくりと読んできた「ブルズアイ社の資料をつぎやん流に読んでみた」シリーズ。今回は赤・オレンジ・黄色のガラスの話です。

読んだのは「Heatwork & Cadmium-Bearing Glass」。PDFで2ページ。1ページ目が説明、2ページ目が色の一覧という、短い資料です。

タイトルの「Heatwork(ヒートワーク)」は、ガラスがこれまでに受けた熱の合計のこと。何℃まで上げたか、だけではありません。その温度に何分いたか、何回焼いたか。この3つが積み重なって、ガラスの「焼かれ具合」が決まります。

同じ810℃でも、10分で止めたガラスと1時間置いたガラスでは、受けた熱の量がまったく違う。3回焼いたガラスは、1回焼いたガラスの3倍ぶん熱を浴びている。そう考えるとイメージしやすいと思います。

そして、このヒートワークにとくに敏感な色がある、というのが今回の資料のお話です。

じつは僕も、赤系のガラスを曇らせてしまったことがあります。焼き重ねたからではありません。高さのあるガラスの塊を作ろうとして、860℃くらいまで上げて焼いたときでした。あとで出てくる「保証の範囲」の815℃より、ずいぶん上です。

ブルズアイの公式サイトの色ごとのページを見ると、0124 レッド(オパール)や 1122 レッドなど、赤・黄色系の多くの色に「キルンキャストには向かない」と書いてあります。理由は、高い温度に長く置くと、まわりのガラスとの相性がずれることがあるから。1122 レッドや 1120 イエローのページには、白く濁る(オパール化する)こともある、とあります。

ストライカー系の赤や黄色は、ほかの色よりちょっとデリケート。その「どこまでならOKで、どこからが要注意か」を1枚にまとめたのが、今回の資料です。

① 赤・オレンジ・黄色は、熱に敏感な色

資料の冒頭はこうです。

ブルズアイの赤・オレンジ・黄色系のガラスに入っている着色成分(カドミウム)は、ほかの着色料よりヒートワークの影響を受けやすい。

この記事では、この色たちを「赤・黄色系」と呼ぶことにします。

ここで大事なのは、「熱に弱い」の意味です。焼いたら割れる、溶けすぎる、という話ではありません。資料が言っているのは、焼きすぎると「色」と「相性(互換性)」がずれやすいということ。

色がずれるのは見れば分かります。やっかいなのは相性のほう。相性がずれると、まわりのガラスと縮み方が合わなくなって、あとから割れる原因になります(相性の話は膨張係数の記事で書きました)。

赤・黄色だけじゃない。緑や茶色にも入っている

2ページ目の一覧を見て、僕がおっと思ったのがここです。

資料に載っているのは全部で38色。赤・オレンジ・黄色はもちろんですが、黄緑・緑・茶色の色も入っています。

  • 0126 スプリンググリーン(オパール)
  • 0221 シトロネル(オパール)
  • 0222 アボカドグリーン(オパール)
  • 0227 ゴールデングリーン(オパール)
  • 1126 シャルトルーズ
  • 1422 レモンライムグリーン
  • 0203 ウッドランドブラウン(オパール)
  • 0310 アンバー(オパール。琥珀色の Amber ではなく、土の茶色の Umber です)
  • 1119 シエナ

黄色を混ぜて作った緑や、赤みのある茶色だと思えば納得ですよね。でも、見た目だけで「赤・黄色じゃないから大丈夫」と判断すると、ここで引っかかります。

ほかにも、2色・3色を混ぜたストリーキーの 2020・2024・2026・2121・2123・2124・2125・3123・3203 も一覧に入っています。資料にも「色を混ぜたスタイルには、この一覧の色が入っていることがある」と注意書きがあります。

それから、この一覧は板ガラスだけでなく、フリット・ロッドなど同じ色番号なら形が違っても全部が対象です。

ブルズアイ社の資料に載っている38色です(板ガラスもフリットも、同じ色番号なら全部)。「焼くまで色が出ない」は、資料で印がついている色(ストライカー)です。

不透明(オパール)(19色)

色番号色の名前焼くまで色が出ない
0024トマトレッド●
0025タンジェリンオレンジ●
0120カナリーイエロー●
0124レッド●
0125オレンジ●
0126スプリンググリーン●
0203ウッドランドブラウン●
0220サンフラワーイエロー●
0221シトロネル−
0222アボカドグリーン−
0224ディープレッド●
0225ピメントレッド●
0227ゴールデングリーン●
0309シナバー●
0310アンバー(Umber)●
0320マリーゴールドイエロー●
0321パンプキンオレンジ●
0329バーントオレンジ●
0337バタースコッチ●

透明(10色)

色番号色の名前焼くまで色が出ない
1025ライトオレンジ●
1119シエナ●
1120イエロー●
1122レッド●
1125オレンジ●
1126シャルトルーズ●
1320マリーゴールドイエロー●
1321カーネリアン●
1322ガーネットレッド●
1422レモンライムグリーン●

ストリーキー(2〜3色の混色)(9色)

色番号色の名前焼くまで色が出ない
2020クリア+サンフラワーイエロー(オパール)●
2024クリア+レッド(オパール)−
2026クリア+スプリンググリーン(オパール)●
2121イエロー+ディープフォレストグリーン−
2123ホワイト+オレンジ(オパール)−
2124レッド(オパール)+ホワイト−
2125イエロー+レッド●
3123ホワイト+オレンジ(オパール)+ディープフォレストグリーン−
3203ウッドランドブラウン(オパール)+アイボリー+ブラック●

一覧の多くの色には「焼くまで本来の色が出ないことがある」という印もついています。いわゆるストライカー(焼いて発色するガラス)です。焼く前と焼いた後で色が変わる、つまりもともと熱で色が動く性質のガラスたち。そう思うと、「熱を受けすぎると色がずれる」のも、なんとなくつながって見えてきます。

38色のうち、この印がついているのは31色。印がないのは 0221 シトロネル、0222 アボカドグリーン と、ストリーキーの 2024・2121・2123・2124・3123 の7つだけです。

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② 保証されているのは「815℃・キープ15分・3回まで」

じゃあ、どこまでなら焼いていいのか。資料にはっきり書いてあります。

ブルズアイは、フュージング用(Grade-F)の、この赤・黄色系の色を全部テストしていて、815℃(1500°F)で15分キープしてから徐冷する焼成を、3回まで耐えることを保証している。

この範囲なら「何も気にせず」フューズしていい、とまで書いています。

ふつうのフルフューズ(たとえば810℃で10分)を3回まで。これなら安心、ということです。

赤・黄色系のガラスで保証されている範囲。815℃でキープ15分、3回まで。それより多く・長く焼くなら自分でテスト

③ 範囲の外に出るなら、テスト焼きするしかない

ここで誤解しないでほしいのは、「3回を超えたら必ずダメ」という話ではないことです。

資料にも、多くの色は15分より長いキープにも、3回よりずっと多い焼成にも耐えるし、作家さんたちは実際にそうやってすばらしい作品を作っている、と書いてあります。

ただし、保証の外でも毎回うまくいかせる方法は、ひとつだけ。

自分でテストすること。

そして、赤・黄色系はほかの色より色と相性がずれやすいので、テストはとくに大事、というわけです。

テスト焼きの7つの手順

資料の手順を、そのまま順番に並べるとこうなります。

  1. 作品に使う色を全部決める
  2. 作品で使う焼成スケジュールを、最後の焼成まで全部決める
  3. テスト用のガラスは、作品に使うガラスと同じ製造日のものにする
  4. 色ごと・製造日ごとにテストピースを作る
  5. 作品と同じスケジュール・同じ回数で焼く
  6. うまくいったこと・いかなかったことを、細かくメモする
  7. 透明の赤・黄色系の色が白く濁ったら(オパール化したら)、相性もずれているサイン。焼き方を変えるか、別の製造日のガラスに替える

3番の「製造日」は、見落としがちなポイントです。ガラスは窯で溶かして作るので、同じ色番号でも、作った日(ロット)によってほんの少し性格が違います。だから「前に焼いたときは大丈夫だった」が、別の日に作られたガラスでも同じとは限らない。テストは、作品に使うのと同じガラスでやる、ということですね。

ちなみにグラクラマーケットでは、元の大きな板をカットして販売しているので、製造日まではお伝えできません。なので、うちのガラスでテストするなら、作品に使うのと同じ板の端っこでテストするのが、いちばん確実なやり方です。同じ板なら、製造日も同じですからね。

透明の赤が白く濁ったら、それは「割れの予告」かもしれない

僕がいちばん大事だと思ったのは7番です。

透明の赤や黄色が、焼き重ねるうちに白っぽく濁ってくる。これを見ると「色が悪くなっちゃった」と思いますよね。でも資料によると、それは相性もずれ始めているサイン。

つまり、見た目の失敗だけでは終わらない。まわりのガラスと縮み方が合わなくなって、あとから割れる心配も出てくる、ということです。失敗まとめでいうと、「変色・曇り」と「割れた」が、じつは同じ原因でつながっていることがある。

濁りに気づいたら、「色が残念」で済ませずに、焼き方を見直す合図だと思ってください。

透明の赤・黄色が焼きすぎで白く濁ると、まわりのガラスとの相性もずれているサイン。焼き方を見直すか別の板に替える

④ いちばん大事な話:泡抜きのキープは「毎回」入れなくていい

ここからが、この資料でいちばん伝えたいところです。資料には「A Cautionary Example(注意したい例)」として、バブルスクイーズ(泡抜きのキープ)の話が出てきます。

板ガラスを重ねた1回目のフルフューズでは、663℃(1225°F)で30〜120分キープして、大きな泡を防ぐのが理にかなっていることが多い。でも、2回目以降の焼成で同じキープを「いつものクセで」くり返すと、赤・黄色系のガラスの色と相性が、焼くたびに落ちていくことがある。

そして、こう続きます。

1回目には作品を助けたやり方が、くり返すと作品の足を引っぱることがある。

正直に言うと、これは僕自身のブログにも関係する話です。

温度の上げ方の記事では「663℃で1時間キープ」を紹介しました。お皿づくりの焼成スケジュールにも、気泡の前編で読んだ「621〜677℃のキープ」にも、同じ考え方の泡抜きキープが入っています。

これ自体は、まちがいではありません。どれも「板ガラスを重ねて、層の間の空気を逃がしたい1回目」の話です。

問題は、それを2回目にも3回目にも、プログラムをそのまま使い回して入れっぱなしにしてしまうこと。

たとえば、1回目でフルフューズしたお皿を、2回目にスランプする。このとき、もう層の間に閉じこめる空気はありません。なのに663℃で1時間止めたら、それは泡抜きでも何でもなく、赤や黄色にとってはただの「余計な熱」になってしまいます。お皿づくりの資料のスランプのスケジュールでも、663℃のところは10分(目で見て確認)でしたよね。

資料は、ここに落とし穴があると書いています。ブルズアイのガラスの多くは保証の範囲を大きく超えても安定しているので、663℃くらいの「低い温度」なら安全だと思い込みやすい。でも、低い温度でも、長く・何回も当てれば、ヒートワークはちゃんと積み上がっていきます。

これ、ゴールドホールドの記事で書いた「ゴールドホールドは初回だけ。くり返すと赤・黄色系の色を痛める」と、まったく同じ考え方です。あのとき「なんでくり返したらあかんの?」の答えが、この資料に書いてあったわけです。

僕自身のやり方も書いておきます。

泡抜きのキープは、1回目の焼成でしっかり入れます。これはおすすめです。

でも、2回目の焼成(スランプなど)では、長い泡抜きのキープは入れません。入れるとしても、急に温度が上がるのを防いで、ガラス全体の温度をそろえるための短いキープくらいにしています。目的がちがうから、長さもちがう、ということですね。

泡抜きの長いキープは1回目の焼成で。1回目は大きな泡を防ぐため663℃で30〜120分。2回目以降は同じキープをくり返さず、短くするか、なくす

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⑤ ヒートワークを減らす2つのコツ

資料の最後は、ヒートワークを減らすためのコツ2つで締めくくられています。

1. 泡抜きの長いキープは、できるだけ避ける

作品が許すなら、短くするか、なくす。

④の話そのままですね。キープを入れる前に、「この焼成で、逃がしたい空気はある?」と自分に聞いてみる。層を重ねる1回目なら入れる。2回目以降のスランプや焼き足しなら、短くするか、なくせないか考える。

2. 赤・黄色系の色は、後の焼成で足す

何回か焼き重ねる作品なら、赤や黄色は最初から入れずに、後の焼成で乗せる。

たとえば、ベースや他の色の部分を先にフルフューズしておいて、赤や黄色のパーツは最後のタックフューズで乗せる。そうすれば、赤や黄色が受ける熱は1回分で済みます。

何回か焼く作品なら赤・黄色は最後に足す。最初から全部入れると赤・黄色が受ける熱は3回分、最後に乗せれば1回分

まとめ

  • ブルズアイの赤・オレンジ・黄色系は熱に敏感で、焼きすぎると色と相性がずれやすい
  • 一覧は38色。一部の緑・茶色・ストリーキーにも入っている。板もフリットも、同じ色番号なら全部対象
  • 保証は815℃・キープ15分・3回まで。それより焼くなら、同じ製造日のガラスでテスト
  • 透明の赤・黄色が白く濁ったら、相性もずれているサイン
  • 泡抜きのキープは1回目のもの。2回目からは見直す。赤・黄色は後から足す

赤や黄色は、フュージングでいちばん目を引く色です。だからこそ、性質を知っておくと強い。

「何回まで焼けるのか」「どこからテストが必要なのか」が分かっていれば、焼き重ねる作品にも、ちゃんと計画を立てて使えます。1回目は泡抜きをしっかり、赤と黄色は最後に乗せて、いちばんいい色のところで止める。そう考えると、焼成プログラムを組むのがちょっと楽しくなってきませんか。

僕がみんなにブルズアイを勧める理由

今回の資料で僕がいいなと思ったのは、「この色たちは熱に敏感です」と、色番号まで全部出しているところです。

メーカーにとって、自分のガラスの弱点を一覧にして配るのは、正直あまり気持ちのいいことではないはず。でもブルズアイ社は、熱に敏感なのはどの色で、どこまでなら保証できて、そこから先はどうテストすればいいかまで、無料で公開しています。「多くの作家さんは保証の外でもうまくやっている」と書いたうえで、「だからこそテストしよう」と言う。

材料屋として僕がみんなにブルズアイを勧めるのは、色がきれいだからだけではありません。困ったときに「なんで?」を調べられるガラスだからです。焼き重ねて赤が濁っても、原因をたどれる。たどれるから、次はうまくいきます。

グラクラマーケットのブルズアイ板ガラスの商品ページにも、ブルズアイ社の公式情報をもとにした「ガラスの性質」を載せています。赤や黄色を選ぶときに、のぞいてみてください。

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出典:Bullseye Glass Co.「Heatwork & Cadmium-Bearing Glass」(#7134、©2022 Bullseye Glass Co.)。内容はつぎやんが日本語で要約・解説したもので、原文の翻訳ではありません。

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