スランプ型は「塗り方」と「置き方」で長持ちする|ブルズアイ社「Mold Tips」をつぎやん流に読んでみた【スランプ型の使い方】
ガラスカット、ガラス洗浄、気泡の前編・後編、徐冷、タックフューズの徐冷、お皿づくり、赤・黄色の焼きすぎと読んできた「ブルズアイ社の資料をつぎやん流に読んでみた」シリーズ。今回はスランプ型(モールド)の話です。
お皿づくりの記事では「フューズとスランプは分けて焼く」「スランプは目で見て止める」を紹介しました。今回はその続き。お皿の形を決める型そのものの扱い方です。
読んだのは、ブルズアイ社の「Mold Tips」から2つ。
- Using Bullseye Slumping Molds(スランプ型の使い方・1ページ)
- Suggested Slumping Schedules(スランプ温度表・4ページ)
1つ目は、型の準備から電気炉への置き方まで。2つ目は、ブルズアイが売っている型ごとの「何℃で何分」の一覧です。順番に見ていきます。
① ブルズアイの型と、寸法の見方
ブルズアイのスランプ型は、特別に調合した粘土を石こう型に流し込んで作ったもの(スリップキャスト)。表面がとてもなめらかで、離型剤がムラなくのる、と資料には書いています。
シェルフプライマー(ブルズアイの離型剤)を塗って正しく扱えば、くり返し使っても割れない。何か月、何年も塗り直さずに使っている作家さんもいる、とも書いています。
ここで1つ、大事な注意があります。
カタログに載っている型の寸法は、いちばん外側(底)の大きさ。電気炉に入るかどうかを見るための数字です。しかも型は手作りなので、1個ずつ大きさが少しずつ違う。
だから資料にはこう書いてあります。
実物の型を測るまで、ガラスを型に合わせて切らないこと。
カタログの数字でガラスを切ってしまうと、フチからはみ出したり、足りなかったりします。型が届いたら、まず定規。ここから始めます。
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② 離型剤は「水5:粉1」、方向を変えて5回塗る
スランプ型にも、棚板と同じように離型剤が必要です。塗らないと、焼いている間にガラスが型にくっつきます。
ブルズアイのシェルフプライマーを型に使うときは、こうです。
- 水5:粉1で溶く
- 粉を吸いこまないように、防じんマスクをつける
- 5回、毎回方向を変えて塗る。例:下へ → 右へ → 上へ → 左へ → ななめに
- ガラスが触れる面は全部塗る
- 刷毛は天然毛のやわらかいもの(ハケ刷毛など)

③ 塗ったら、棚板よりゆっくり乾かす
塗りたての型は、焼いて乾かします。このとき棚板よりゆっくりが資料のポイント。急に温度を上げると、型が割れることがあるからです。
| 速さ(℃/時) | 温度 | キープ |
|---|---|---|
| 278 | 260℃ | 0:20 |
乾いたら、スランプの前にもうひと仕事。
- 空気穴につまった離型剤を取る
- 抜けた刷毛の毛も、ていねいに取る
そして、塗った型は大事に保管して、大事に扱う。塗った面に欠けやキズがあると、そこにガラスがくっつく原因になります。
※原文は「500°F(278°C)per hour to 500°F(260°C)」と、同じ500°Fに違う摂氏が並んでいて少し分かりにくい書き方です。1つ目は速さ(1時間に500°F=1時間に278℃上げる)、2つ目は温度(500°F=260℃)なので、数字は合っています。
④ 塗り直しの目安:ゆるい型は30回以上、急な型は2〜3回ごと
塗った面に欠けやキズがなければ、型は何回も使えます。どれくらいもつかは、型の形しだい。
- なだらかなカーブで、低い温度で焼く型→ 30回以上、塗り直さなくていいこともある
- 斜面が急な型・くぼんだ模様がある型→2〜3回焼くごとに塗り直し
急な型の塗り直しが早いのには、理由が書いてあります。ガラスが急な斜面を落ちていくとき、型の表面の離型剤を少しずつ持っていってしまう。離型剤が薄くなると、ガラスが途中で引っかかって、片寄って落ちることがあるからです。
塗り直すときは、
- 古い離型剤を、乾いたスポンジたわしでやさしくこすって落とす
- ②と同じように、方向を変えて5回塗る

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⑤ スランプの焼き方:真ん中に、浮かせて、水平に
スランプに何℃・何分かかるかは、
- 型の形と直径
- どれくらい深く落とすか
- ガラスの重さ
で変わる、と資料にあります。だから新しい型を使うときは、まずシンプルで安いガラスで1回焼いて、スケジュールを確かめる。いきなり本番の作品を乗せない、ということです。
電気炉の中での置き方は4つ。
- 電気炉の真ん中に置く
- ヒーターから5cm(2インチ)以上離す
- 型を炉の床や棚板から浮かせる(熱と空気が型の下にも回って、ガラスの温まり方・冷め方がそろう)
- 焼く前に、型とガラスが水平か確かめる

前開きの電気炉なら、炉の外で型にガラスを乗せて、真ん中を合わせてから入れると見やすい、というひと言も添えてあります。
おまけのコツが、型の側面に品番を書いておくこと。資料では、陶芸用の下絵付け鉛筆を使うよう勧めています。
グラクラマーケットで扱っている磁器製スランプモールドがあるのですが、こちらは水溶き用だとどうしても流れやすいので、スプレー式のパーフェクトプライマーがオススメです。
新しい型を使うときは、ここまでの準備とテスト焼きから始めてください。
グラクラマーケット
スランプモールド 丸皿150(φ150mm・磁器製)
直径15cmの丸いお皿が作れるスランプモールドです。
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グラクラマーケット
スランプモールド 正方皿120(120×120mm・磁器製)
12cm角の四角いお皿が作れるスランプモールドです。
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グラクラマーケット
スランプモールド 八角皿(約98×98mm・磁器製)
八角形のガラスプレートが作れるスランプモールドです。
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⑥ スランプ温度表の使い方
ここからは2つ目の資料、スランプ温度表です。ブルズアイの研究・教育スタジオで、何年もかけて集めたスケジュールの一覧です。
最初に、資料自身がこう断っています。
- この表はあくまで出発点
- 電気炉は1台ずつ焼け方が違うし、ガラスの種類によってやわらかさ(粘り)も違う
- 表の数字は6mm厚のガラスを、Paragon GL24(ブルズアイが使っている電気炉)で焼いたときの記録
表の読み方
型ごとに書いてあるのは、1段目(スランプの温度まで上げる段)だけ。2段目からは、全部の型で共通の形に当てはめます。
| 段 | 速さ(℃/時) | 温度 | キープ |
|---|---|---|---|
| 1 | 型ごと(表を見る) | 型ごと | 型ごと |
| 2 | できるだけ速く | 482℃ | 1:00 |
| 3 | 56 | 371℃ | 0:00 |
| 4 | できるだけ速く | 21℃ | 0:00 |
「できるだけ速く」は、扉を閉めたまま電気炉が自然に冷めるのにまかせる、という意味です。2段目の482℃・1時間キープが徐冷、3段目がゆっくり下げる段です(徐冷のくわしい話は温度の下げ方の記事で書きました)。

1段目の例
表から、いくつか抜き出してみます(ブルズアイの型の場合)。どれも、1段目の速さは1時間に167℃です。
| 型(品番) | 大きさ | 温度 | キープ |
|---|---|---|---|
| Plain Plate(8721) | 37×3cm | 649℃ | 0:05 |
| Round Plate(8928) | 33×2cm | 663℃ | 1:30 |
| Square Plate(8901) | 8×8×2cm | 677℃ | 1:30 |
| Square Slumper A(8636) | 12×12×2cm | 638℃ | 0:05 |
表全体では、1段目の速さはほとんどが1時間に167℃。温度は627〜685℃、キープは5分〜2時間15分と、型によってかなり幅があります。同じ「お皿の型」でも、これだけ違う。だから資料は「新しい型はまずテスト」と言っているわけです。
※ドロップアウト型(真ん中が抜けた輪っかの型)で浅いお皿を作るスケジュールには、「型を浮かせず、棚板に直接置く」と注記があります。⑤の「浮かせる」の例外です。
※表の寸法も、①と同じく型の外側の大きさ。表のページごとに「実物を測るまでガラスを切らないこと」と書いてあります。
⑦ 厚みにムラがあるもの・9mm以上は、もっとゆっくり
表は6mm厚の、厚みがそろったガラスの記録です。そうでないものは注意が必要、と資料にあります。
- 厚みにムラがあるもの(タックフューズした作品の多く)
- 9mm以上の厚いもの
こういう作品は、表よりもゆっくり焼かないと、急な温度変化で割れたり、徐冷が足りなかったりすることがある。
タックフューズした作品をスランプするときの考え方は、タックフューズの徐冷の記事と徐冷と温度差の記事にまとめています。
⑧ 593℃を超えたら、のぞいて確かめる
最後は、温度表の資料のいちばん最初に書いてあることです。
どのスケジュールも、すべての作品に合うわけではない。だから、焼いている途中にスランプを目で見て確かめることを勧める。
見方はこうです。
- 扉を少しだけ開けて、さっとのぞく
- 数秒以上は開けっぱなしにしない
- 型にもよるが、593℃を超えたあたりから見はじめる
- 温度がスランプの温度に近づくあいだ、キープ中も、落ちきるまで見る
- 見たことはメモしておく(次から同じ型で使える)
※摂氏版のPDFには「1100℃を超えたら」と書いてありますが、これは華氏の1100°F(=593℃)がそのまま残った書き間違いです。華氏版とWebページは1100°F。この記事では593℃と書きました。
お皿づくりの記事の「スランプは目で見て止める」と同じ話です。表の数字は出発点で、最後に決めるのは自分の目。メモが増えるほど、自分の電気炉と型の「答え」が手元にたまっていきます。
まとめ
- 型の寸法は外側の大きさ。実物を測ってからガラスを切る
- 離型剤は水5:粉1、方向を変えて5回。塗ったら棚板よりゆっくり乾かし、空気穴を掃除
- 塗り直しは、ゆるい型なら30回以上、急な型・くぼみのある型は2〜3回ごと
- 新しい型は安いガラスで1回テスト。真ん中に・ヒーターから5cm以上・浮かせて・水平に
- 温度表は6mm厚での出発点。1段目だけ型ごと、2段目からは共通
- 厚みにムラがある作品・9mm以上はもっとゆっくり
- 593℃を超えたら、数秒だけのぞいて確かめる。見たことはメモ
スランプ型は、一度そろえたら何年も付き合う道具です。離型剤をていねいに塗って、真ん中に、浮かせて、水平に。新しい型は安いガラスで1回試して、焼いている途中はのぞいて、メモを残す。
そのメモが、自分の電気炉と自分の型だけの「温度表」になっていきます。お気に入りの型が1つ決まると、お皿づくりがぐっと楽しくなりますよ。
僕がみんなにブルズアイを勧める理由
今回の資料で僕がいいなと思ったのは、自分たちが売っている型のスケジュールを、型ごとに全部出しているところです。
約100種類の型について、何℃まで上げて何分置くか。研究・教育スタジオで何年もかけて集めた記録を、無料で公開しています。しかも「これが正解です」とは言わない。「あくまで出発点。電気炉もガラスも1つずつ違うから、目で見て確かめて、メモを残して」と書いています。
材料屋として僕がみんなにブルズアイを勧めるのは、色がきれいだからだけではありません。困ったときに「なんで?」を調べられるガラスだからです。型にくっついた、片寄って落ちた。そんなときも、資料をたどれば原因の手がかりがあります。
グラクラマーケットのブルズアイ板ガラスの商品ページにも、ブルズアイ社の公式情報をもとにした「ガラスの性質」を載せています。
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出典:Bullseye Glass Co.「Mold Tips: Using Bullseye Slumping Molds」「Mold Tips: Suggested Slumping Schedules in Celsius」。内容はつぎやんが日本語で要約・解説したもので、原文の翻訳ではありません。
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